夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「チナミは私の友達だから、私の事が知りたい?」
「え、まぁそんな感じだ。お前とオレは友だからな」
「そうか。そうなんだ」

ようやくちゃんとした理由が分かり、チナミの表情が少しだけ晴れた。
そしてそう言うことなら、私にも理解出来て納得する。
凪もそれが分かったから、きっと席を立ったんだ。

「だからオレはお前の敵じゃない。ゆきだってきっと事情を話せば分かってくれるはずだ」
「でもお兄ちゃんはまだ話さない方が良いって言ってた。だからゆきには内緒にして欲しい」
「藤原が?どうしてだ?」
「分からない。でもお兄ちゃんのことだから、何か考えがあるんだと思う」

やっぱりチナミはゆきよりでゆきに話せと言うけれど、私はお兄ちゃんに口止めされているから拒否をした。
チナミも兄を慕っているから私のことをわかってくれると思ったのに、眉を細めて難しい表情で私を見つめる。
怖かったけれどそれは絶対なので改めるつもりはない。
お兄ちゃんの考えは、たまに間違うけれど正しい。

「マリアは藤原の言葉を信じて疑わないのだな?」
「うん。だってお兄ちゃんは私よりもいろんなことを知っていて、何があっても私が嫌がることをしない」
「そう言うところも同じだな。少しでも疑って悪かった」

強くお兄ちゃんのことを言い続ければ、ようやく本当にわかってもらえて謝られる。
それはやっぱりチナミも私と同じだから?

「チナミもお兄ちゃんを、何があっても信じてる?」
「ああ、もちろんだ。オレの兄上もなんでも知っていて、頼りになるからな」
「マリア、ここにいたのか?よう、チナミ」

チナミとお兄ちゃんの話を色々しようと思ったら、お兄ちゃんがやって来た。
私のことを探していたらしい。

「何かあった?」
「あ、こんにちは」
「これから友達に会いに行ってくるから、凪さんの言うことをちゃんと聞くんだぞ」
「うん、わかった。いってらっしゃい」

たいした用事じゃなくてホッとし、笑顔でお兄ちゃんと約束を交わす。
お兄ちゃんのここでの友達は知らないけれど、たまには遊ぶことも必要だ。
そんなやり取りをなぜかチナミは黙ってみていて、ほほが赤く染まってどこか上の空。

「マリアの笑顔は可愛いだろう?」
「そうだ・・・な何を馬鹿なことを聞いている?くくだらない」
「私の笑顔おかしい?」
「いやお前の笑顔は愛ら・・・用事はすんだから、オレは帰る」

お兄ちゃんの問いにチナミは髪を触りながら動揺して怒りだしたから、不安になり聞いて見れば今度は声を裏返し何かを言い掛け速攻で帰ってしまった。
ますます不安になって、どうしたらいいのか分からなくなる。

チナミは私の笑顔が嫌い?
そんなにおかしい表情?
でもお兄ちゃんや祟や凪は、私の笑顔は可愛いって言ってくれた。
矛盾だ。

「少しからかいすぎたな。マリア、そんな顔するな」
「チナミの前では笑わない方がいい?」
「違うよ。あれは照れ隠しと言うもんだ。だから気にするな」
「・・・うん」

お兄ちゃんの言うことは正しくて、私の考えなど間違っている。
だからチナミは照れ隠ししただけなのに、なんだか心が晴れない。
お兄ちゃんは大きな手で、私の頭を優しくなぜてくれた。



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