夢幻なる絆

□小松家育児日記
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#NAME3##、夫のワガママに苦労する



「帯刀さん、お誕生日おめでとうございます!!」
「だっだっ」
「美岬もお祝いしてくれるの?ありがとう」
「あ〜あ〜」

朝起きてすぐに美岬と一緒に帯刀さんとお祝いの言葉を伝えると、帯刀さんは楽しげに美岬を私から引き取りほほずりをする。
ますますご機嫌になる美岬はとびっきり愛らしい笑顔を振り撒く。

帯刀さんにとっては愛娘に祝われるのは、妻よりも嬉しいんだと思う。
まぁまだ美岬には何も理解してないと思うんだけど、そんなのは帯刀さんだって分かっている。
それでも嬉しい。
来年になれば、少しは理解できるかな?

「帯刀さん、今日は早く帰って来て下さい。ご馳走作って待ってます」
「ご馳走ね。それは夕凪のことも含まれる?」
「え、まぁ私はデザートにでもして下さい」
「それなら良い。誕生日ぐらいは好きなものを思う存分味わいたいからね」
「・・・・・・・」

朝っぱらから娘の前で話す内容じゃないこと話始めるエロい旦那。
しかもその言い方からして、一度では済まされなさそう。

美岬が産まれて来てからと言うもの、私はどっちでも良くなっていて週に一回と言う状況だ。
お産後だからなのか前ほど気持ち良くなくなってしまったから。
一年ぐらいはそう言うものらしい。
けして帯刀さんに愛情が薄れたわけではなく、それ以外は前と変わらずラブラブ夫婦。
帯刀さんは毎日でもやりたいみたいらしいけれど、私がこう言う状態だから何も言わずにいてくれる。
だから今日ぐらいはちゃんと言ってもらわないと、いつかは爆発してしまい愛想をつかされてしまう。

「今日は美岬も一緒にいく?」
「あ〜?」
「何を言い出すんですか?仕事の邪魔されてしまいますし、いくら離乳食を始めているとは言え美岬はまだ母乳なんですよ。私の母乳以外の母乳をあげたら、離縁しますからね」
「だったら夕凪も一緒に来なさい。今日は美岬と一緒にいたい」

帯刀さんらしくないわがままに、すかさず頭に血が上り声を抗え却下して美岬を奪い取る。
しかし半分は聞く耳持たずで、更なるわがままを言って私を困らす。

家族同伴で出勤?
職場参観って言うのはあったとしても、そんなのは聞いたことがない。
しかも職場参観でも七年以上早い。

「帯刀さん、わがままですよ」
「私はわがままなど言ったつもりはないよ。それに今日はわがままが許される日でしょ?」
「もういいです。私もいきます」

これ以上何を言っても無駄だと思い、帯刀さんのわがままを聞き入れることにした。
今日だけは喧嘩なんてしたくない。








「御家老。なんで凪と美岬を連れてきたんですか?」
「今日は私の誕生日だから、美岬と一日を過ごしたかったからね。それより西郷、美岬はますます愛らしくなったでしょ?」
「だっ」
「愛らしくって、先週お宅に伺ったばかりですよ?」
「西郷の目は節穴だね。一週間前より比べものにならないぐらい愛らしくなってるじゃない?」
「はぁ・・・」

西郷さんに出会い私と美岬がいることに不審がられるけれど、帯刀さんは正当化しさらに他人には理解出来ない親馬鹿末期が炸裂。
案の定西郷さんには理解出来ないようで答えに困っている。
上司を怒らせる訳にはいかないのは、いつの時代も同じこと。
西郷さんが気の毒だなとは思うけれど、私も何も言えず苦笑するだけ。
特に今日は余計何を言っても無駄だから、ほっといた方が無難なんだろう。
西郷さんには悪いけど・・・。

「じゃぁ美岬、お父さんの部屋に行こうね」
「だ〜」

そんな私の諦めなど知るはずもなく、美岬と二人だけで先に中へ入っていく。
楽しそうなのは何よりだけれれど、その後ろ姿を見てるとなぜか不安は押し寄せてくる。

「西郷さん、今日って大切お客さんとか来ないですよね?」
「アーネストとその上司が・・・」
「・・・大丈夫ですよ。帯刀さんは大人・・・帯刀さん〜」
「おい凪。あいつも結構苦労してんだな」

念のため本日の業務を確認すれば、聞かなきゃよかった答えが返ってくる。
アニーだけならまだしもその上司ともなれば、別の話だ。
帯刀さんは大人だから大丈夫だと思っても、やっぱり不安なので慌てて二人を追いかけた。
ありがたいことに西郷さんにそんな苦労が分かってくれたらしい。

「何、夕凪?」
「まさかだとは思いますけれど、お客さんに会う時まで美岬を同席させたりしませんよね?」
「させるよ。もちろん夕凪もね。先方も家族同席だから、問題はないでしょ?」

帯刀さん追い付き遠回しに聞いてみれば、意外な答えに目が点になり拍子抜けする。
だから帯刀さんは美岬を連れていくと言ったんだ。
らしくないわがままの意味がようやく判明したけれど、なんでわざわざわがままで通したか疑問に残る。
事情を話して欲しかった。

「だったら初めっからそう言ってください。それに西郷さんにだって、ちゃんと伝えてあげるべきですよ」
「それもそうだね。すまない、少し浮かれていた」
「わ分かればいいんです。それで相手のご家族はどのような方なんですか?」

意見すれば申し訳なさそうに謝られてしまい、それ以上何も言えず話題を変える。
もしかして私を怒らせない計算かも知れないけれど、本当に浮かれていたのは間違えないだろうから。

「両親は外交官で、四歳の娘を連れてくると言っていた。母国には年の離れた学生の兄がいるそうだ」
「へぇ〜そうなんですか?白人の女の子だなんて、フランス人形みたいに可愛いんだろうな」
「何を言っているの?美岬より可愛い子などいるはずないでしょ?」

萌え要素たっぷりの少女にくだらない妄想をしていると、帯刀さんはムッとしてさも当然のように怒り出す。
親馬鹿には禁句だった。
確かに私だって美岬は世界で一番可愛いと思っているけれど、それは親のエゴだってちゃんと分かっている。
可愛い子は可愛い。

「美岬、良かったね。お父さん、美岬が世界一可愛いって」
「あ?」

美岬に言っても、当然意味など分からない。






「こちらが、エドワード夫妻とその娘のフランソワです」
「They are my wife and a daughter's Misaki」

アニーが紹介してくれると、帯刀さん自ら私達を淡々と紹介する。
南方先生のお陰できれいな発音で、英語が苦手な私には聞き取れない。
ここまで上達するなんて、帯刀さんは勉強家だ。
そして私にはまったく分からない会話が熱心に進んでいく。
仕事をしてる帯刀さんも格好いい。

「小松さんには、驚きを隠せませんよ。一年もしないうちにほぼマスターしてしまうとは思いませんでしたよ。これでは私がいる意味がない」
「南方先生の教え方もよかったんだよ。それにいくら帯刀さんが完璧でも他の藩士や私には必要だからね」
「そう言ってくれると助かります。今二人は娘のことで盛り上がってます。エドワードさんも相当な親馬鹿ですからね」

本来ならこう言う場では大活躍するはずのアニーは残念そうに弱音をこぼすから、私はフォローして元気を出してもらい説明してもらうけれどそれは呆れることだった。
少しでも見とれてしまった私が、馬鹿馬鹿しい。
よく見れば婦人も呆れてため息をついている。
どこの家庭も同じだな。

「How old is Misaki?」
「え、あセブンムーン」
「?」

美岬に興味津々のフランソワちゃんは突然そんな事を聞かれて、意味は分かった物の答えが分からずそれらしい単語を答えてみた。
大人なら分かってくれるかも知れないけれど、フランソワちゃんは首を傾げ大きなつぶらで私を見つめる。

「凪さん、それを言うならSeven monthsですよ。美岬はもうそんなになるのですか?」
「うん、お陰様で元気にすくすく育ってるよ。美岬、お姉ちゃんのフランソワちゃんだよ」
「ああ」

アニーのおかげでフランソワちゃんにちゃんと伝わり、美岬にも教えるとちょっとは理解出来た・・・と思う。


その後美岬はフランソワちゃんに沢山遊んでもらってお昼を食べてすぐに二人共ぐっすり寝てしまい、アニーとエドワード一家は帰っていった。
今度は私達が英国大使館へ行く約束をしたので、帯刀さんとエドワードさんは親馬鹿同士意気投合したに違いない。
美岬も初めての友達が出来たから、末永く良い付き合いをしたい物だ。








「帯刀さん、もう一人子供作りましょうか?」
「いきなりどうしたの?」
「美岬とフランソワちゃんの遊ぶ姿を見ていたら、やっぱり姉妹は良いなと思ったんです。あもちろん姉弟でも問題ないですけどね?」
「そうだね。夕凪がそれで良いなら、私は構わない。二人でも三人でも五人でも」

今日改めて実感したことを言ってみると帯刀さんも同じ気持ちで嬉しいけれど、私以上のことを考えていて言葉をなくす。

確かに子供は何人でもいいと言っていたけれど、本当にそんなに欲しいんだろうか?
経済的にはまったく問題なくても、私がそんなに育てられるだろうか?
まぁそれは助けてもらっている梅さんに相談するとして、もう一人は絶対作ろう。
私自身年の近い兄弟は憧れていたことがあったから、出来ることなら一年以内には作りたい。
・・・あれ?

「夕凪、まだ夕方だよ?そんな姿晒したら理性を保てなくなるよ」
「すすみません。私美岬を連れて先に帰りますね?」
自分でも分かる程の突然のムラムラして来てゴクンと唾を飲むと、当然帯刀さんに気づかれてしまい恥ずかしいと思いながらそうならないように、我が家へ一足先に帰ることにした。
このままでは政務中の帯刀さんを襲ってしまいそう。
それぐらい帯刀さんを求めている。

子供が欲しいなんて思ったから、しばらく眠っていた精力が噴火した?

しかし

「駄目許さない。こんな姿私以外の男性に見せたくない。求めればいいでしょ?」
「こんな所で、いいんですか?」
「当たり前でしょ?ねぇ夕凪、私が欲しい?」

帯刀さんはそれを許してくれず、私を抱きしめ首筋にキスしてから耳元で問う。
分かりきって誘っている。
こんな所でするのはどうかと思うけれど、私の理性は失われているため頷くことしか出来ない。

「・・・はい。だったら布団を引くので少し」
「必要ない。隣の部屋に用意させてる」
「え?・・・その気でいたんですね?」
「そうだよ。今日は夕凪の最高に出来上がっている身体を抱きたかったからね」

どうやらこうなることを予想済みだったから準備万全にしていたようで、私を抱き上げふすまを開けると本当に一枚だけ布団が引かれていた。
つまり私がこうなることを予想していた。
ひょっとして今日エドワードさん一家を呼んだのも計算していたのかも知れない。
私のすべてを知った帯刀さんだからできること。

「帯刀さんは私のことよく知ってますよね?」
「二年以上も一緒にいるのだから当たり前でしょ?」
「そうか。帯刀さんの誕生日を祝うのって三度目なんだ」

当然とばかりに言われてしまい、改めてその事を実感する。

まぁ正確にはいない時期もあるからもっと短いんだけれど、欠点だらけの私を前と変わらず帯刀さんに愛され続けている。
それってすごく幸せなんだよね?

「夕凪、愛してる。これからもこうして私だけの者でいなさい」
「もちろんです。私は何があっても帯刀さんの傍にいます」

そして私達は愛を語り合い、美岬が起きるまで続くのだった。



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