夢幻なる絆

□小松家育児日記
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凪、娘が可愛くてしょうがない。



愛娘の美岬が産まれてから私の生活は美岬中心に回っていた。
それは帯刀さんも同じで私より美岬のことを一番に考えていたから、夫婦だけの時間がここしばらくなくなっていたりするけれど問題ないと思っている。
だって私は今でも帯刀さんのことを愛しているし、帯刀さんだって私のことを愛してくれているはずたから。


「美岬、おはよう。ごはんにしようね」
「あ〜あ〜」

朝目覚めるとすでに美岬は起きていて、私がそう言いながら抱き抱えると、美岬はニッコリ笑い柔らかい手が私の顔に触れる。

今日も美岬は世界で一番可愛い。
我が娘ながら、惚れ惚れするよ。

「お父さんは昨夜も遅かったから、静かにしようね」
「あ〜」

最近政務がよほど忙しいのが帰宅が午前様になっている帯刀さんは、まだ気持ち良さそうに熟睡していた。
私達家族のために毎日懸命に働いてくれているんだから、睡眠の邪魔なんて出来るだけしたくない。
それに帯刀さんの寝顔も無防備で可愛いんだよね。
いつもは色っぽくて、未だにドキドキが止まらないのに。

「美岬のお父さんはすごくかっこよくて優秀な人なんだよ。でもだからってお父さんのお嫁さんになりたいなんて言わないでよ。お父さんはお母さんの夫で、美岬のお父さんなんだからね」

美味しそうにお乳をたくさん飲み続けている美岬に、私はいつものようにそう言い聞かす。
帯刀さんや他人に聞かれたら爆笑され馬鹿にされると思うけれど、例え美岬が愛娘だとしてもそんなこと言われたら間違えなく嫉妬する。
私とはそう言う女だ。
だからこうして今から言えば、帯刀さんは対象外になるだろう。

「それとも早い所許嫁を作るべきか?だけど美岬にも恋愛結婚して欲しいな」
「あ〜?」

馬鹿馬鹿しいことを本気で考え悩んでいると、美岬は飲むのをやめ私を可愛い大きな瞳で見つめる。

美岬は絶対大きくなったら、帯刀さんに似て美人になると思う。
性格まで似て男遊びしなければいい・・・かと言って、私みたく気が強いドジっ娘になっても嫌だな。
美人のドジっ娘キャラは二次元だったらいけるかも知れないけれど、リアルだったら引くだろう。

「美岬は心優しい女の子になってね。そう言えば今日は帯刀さんお休みみたいだから、三人でどっか遊びに行こうか?」
「ああ」
「なら決まりだね」

美岬に聞いても美岬はそれに反応するだけだと分かりきっているのに、聞いて勝手に自分がいいように解釈する。
それに美岬は私と帯刀さんが笑顔で幸せそうにしているだけで嬉しいはず。

「どんな服を着ようか?美岬は何着ても似合うから、お母さん迷うんだよね?」
「夕凪、おはよう」
「あ、帯刀さん、おはようございます」
「あい」
「美岬もおはよう」

美岬の衣装部屋に行こうとすると帯刀さんがお目覚めのようで挨拶され、私と美岬も一緒に元気よく挨拶する。
休みなのだからもう少し寝てればいいと思うものの、目覚めた原因が私達かと思うと罪悪感を感じ何も言えない。

「帯刀さん、今日は三人でお出掛けしませんか?」
「そうだね。天気も良さそうだし、糺の森にでも行こうか?」
「いいですね」
「だっ!だっ!!」

私の誘いに即答で賛成してくれ、美岬の頭をなぜる。
ますます美岬の機嫌がよくなりはしゃぎ出す。
しかし

「所で夕凪は最近私が深夜帰宅でもまったく無関心のようだけど、私がよそで愛人を作っているとか少しも疑わないわけ? 」
「え?」
「美岬が生まれる前は二日深夜帰宅が続いただけで機嫌が悪くなって疑っていたのに、現在私の深夜帰宅は十日も続いているんだよ」
「・・・いる・・・・ですか?」

まさかまさかの爆弾発言を聞いた瞬間、血の気が一気に引き奈落の底へと突き落とされる。
信じたくない台詞。
確かに美岬が生まれる前ならそうだったけれど、美岬が生まれて私は母親になって妻としても成長した。
帯刀さんのこと信じていたのに・・・。

「夕凪?」
「それって離縁って言うことですか?でもこの時代は一夫多妻制だから、・・・大丈夫ですよね?」

頭がパニックになって涙が溢れだして、もう精神状態は一瞬でぐちゃぐちゃだ。

「だぁ〜ん、だぁ〜ん」

私の涙が美岬に落ちるとあんなにご機嫌だった美岬は、私の心を感じ取ったのか大声で泣き叫ぶ。
すぐにあやして泣き止まさないといけないのに、今の私にはそんな余裕がない。
例え離縁されなくても、帯刀さんはもう私だけを愛してはくれなくなる。

「私のことを愛してくれなくても、美岬だけは愛して下さいね」
「夕凪、落ち着きなさい。私は仮の話をしただけであって、愛人がいるとはいってないでしょ?美岬も大丈夫だから」
「え、でも・・・」

自分から冷たく言ってきたのにそう困ったように訂正してきて、私を抱き寄せ涙を拭き取ってくれる。

「本当に私は大人げないね。妻があまりにも娘ばかりで私の相手をしてくれなくなったぐらいで、子供みたいな意地悪な問いをして妻と娘を泣かしてしまうなど。まさかそんな反応されるとは思わなかった。・・・・本当にすまない」

帯刀さんだしからぬでも、これが本心であることを私は知っている。
まさか私のように愛娘にまで、嫉妬するなんて思わなかったけど。
でも私はここまで帯刀さんから愛されているって、再確認できてよかった。

どんなに愛し合っていても、想うだけでは伝わらない。

「私こそ気づかなくて、ごめんなさい。てっきり帯刀さんも私と同じで、美岬がいるからそれだけでいいかと思ってました」
「いい訳ないでしょ?私は夕凪にも癒して欲しいし、甘えても欲しいと思っている。娘は娘。妻は妻だよ」
「そうでした。これからはちゃんと帯刀さんが望んでいる良き妻にもなります。でも私は美岬が生まれたからって、帯刀さんへと愛が薄れた訳じゃないんですよ」
「そう、それならいいいけれど。なら今夜は期待してても良いんだね」
「・・・もちろんです」

ようやく少しの誤解は解けあっと言う間に元の私達に戻れば、あんなに泣いていた美岬は幸せそうにスヤスヤ眠っていた。
ただ泣き疲れたのとお腹いっぱいになって眠っただけなのかも知れないけれど、幸せそうだからきっと安心して眠ったと思いたい。

今夜は久しぶりだから、ちょっと緊張する。
でも・・・・楽しみなだな。



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