夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「すっかり江戸でも暮らしに馴染んでいるようだけど、そんなに楽しい?」
「はい、毎日が楽しいです。もちろん、京での暮らしも楽しいです。町の人達はいい人ばかりだし、帯刀さんが傍にいてくれますから」

突然聞かれた問いに単純な答えだけではなく、私にしては珍しく気の聞いた言葉も付け加えた。
帯刀さんがいるから楽しい。
すると帯刀さんは満足だったらしく、微笑みながら私の頭をなぜる。

「そう。それならよかった。ならそろそろ帰ろうか?」
「はい。でもその前に浅草寺でお参りしたいです」

美味しく頂き日も傾き出したから帰ろうとする帯刀さんに、私は今さらそんなことを言って立ち上がる。
四神達の加護があったとしても、お参りするのは親なら当然だろう。

「その方が良いね」

帯刀さんも思いは同じだから、反対するはずなかった。







「(元気な子が産まれて、親子三・・・あ、もっと増える予定だから、家族みんなが仲良く幸せに暮らせますように)」

なんてことを思いながら、懸命に願い事を祈る。
これが、今の私のすべての願い。
子供は出来ることなら、二人以上欲しい。

「帯刀さんは何人子供が欲しいですか?」
「何人でも構わないよ。賑やかな家庭を作りたいね」
「私もです」

と帯刀さんに聞いてみると特に恥ずかしがることもなくさらりと答えられ、私もそんな家庭にしたいからすんなり終了。
再び私達は手を繋ぎ階段を下りる。
賑やかな家庭なんて帯刀さんらしくない気がするけれど、私との暮らしで馴れたのかも知れない。
賑やかなのは大好きだから、同じ気持ちで嬉しい。


「あ、本当に凪と帯刀がいた。シュウの言う通りだ」
「凪は私の神子だから、このぐらいなら当然ですよ」
「シュウは凄いね。凪さん帯刀さん、こんにちは」
「こんにちは。二人もお参りしに来たの?」

向こうの方からマリアちゃんと渓がシュウちゃんに連れられ、私達元へと小走りでやって来る。
そんなシュウちゃんにマリアちゃんは尊敬の眼差しを向け、どこかシュウちゃんは誇らしげだった。

それにしても渓はやたら大きな包みを持っているけれど、一体何なのだろうか?
周囲から地味に注目の的になっているような。
それともたんにイケメンだから、そう言う意味での注目の的?

「違う。シュウから聞いた。おめでとう凪。妊娠していて、私も嬉しい」
「おめでとうございます。マリアがどうしてもすぐにお祝いしたいと言って、シュウに案内してもらったんです」
「ありがとうマリアちゃん渓。シュウちゃん、ご苦労様」
「気にしないで下さい」

思わぬ真実に少々びっくりする物の、それは何よりも嬉しいものだった。
わざわざそれだけの理由で私達を探しに来てくれて、自分のことのように喜んでくれるマリアちゃんは、素敵な女の子だって何よりもの証拠。
そして嫌がらず引き受けてくれるシュウちゃんも。
他の四神もきっとそれは、同じなんだと思う。

「それで凪の赤ちゃんにプレゼントを選んで買って来た。お兄ちゃん、凪に渡して」
「え、ここでか?祝賀会の時で良いだろう?」
「あ、・・・わかった・・・」
「良いよ。ここでもらう。ありがとうマリアちゃん」
「うん!!」

いきなりのマリアちゃんの台詞に渓はごもっともなことを言って止めるのだけれど、それに対してしょんぼりしてしまうマリアちゃんの姿が見てられなくて、渓から大きな包みを受け取る。
独特の形をしていて、それでいて抱き心地がいい。

・・・ぬいぐるみ?

「危ないから、私が持ってあげるよ。マリアくん、ありがとう。君は相変わらず優しいね」
「優しい?私が?」
「うん、マリアちゃんはとっても優しくて可愛い女の子だよ」
「よかったなマリア。もちろん俺もそう思うよ」
「私もそう思いますよ」
「ありがとう、みんな」

そんな私から帯刀さんは大きな包みを代わりに持ってくれマリアちゃんにお礼を言うと、マリアちゃんはキョトンとして訳も分からず首を傾げた。
だから私は帯刀さんの言葉を肯定すると、渓やシュウちゃんも頷き同じことを言う。
マリアちゃんを知っている人は全員、優しい女の子だって思っているだろう。



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