夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「まったくどうして私の妻はいつまで経っても学習が出来ないんだろうね?今日は一日中私に甘えなさいと言ったでしょ?それはどう言う意味か理解できてる?」
「・・・今日は私の傍から離れず大人しくしてなさい」
「そう。まぁ大人しくはしなくても良いけれど。・・・そんなに私は夫としての魅力がないの?」

自室に戻るなり早速帯刀さんは私を流し目で睨み呆れきった口調で叱るけれど、いきなり寂しそうな声で私を強く抱き締め耳元で問われる。
帯刀さんの良い匂いが、私を包みこむ。
私は酷いことを無自覚でしてしまった。

本当に学習能力がない。
旦那様にそんなことを言わせてしまうなんて、妻として失格だ。

「・・・本当にすみません。だったらこれから黒米いなりと安道名津を食べに行きたいです」
「いいよ。でももう少し夕凪を感じさせて」
「そうですね。私も帯刀さんの温もりを感じていたい」

心から謝り早速要望を言うと二つ返事で頷いてくれたけれど、すぐではなくさらにギュッと抱き締められ甘くねだられる。
ここまでされたら流されやすい私は笑顔で、強く抱き返す。
きっと今の私は世界中の誰よりも幸せなんだろう。
またっここに無事に戻れて、ちゃんと子供を喜んでくれて良かった。

「夕凪、泣いてる?」
「あれ、本当だ。幸せの涙ですね。ようやく帯刀さんの傍に帰ってこれて、子供が出来たことを喜んでくれたからホッとしたんです」

それ以外理由が見つからない。

「当たり前でしょ?自分の子供が産まれてくるのを喜ばない親がどこにいる・・・義弟がそうだったらしいね」
「でも今は産まれてくるのを心待ちにしていて、今の帯刀さんのように優しい顔をしてます」
「父親と言う物はそう言う物だからね」

当然そうに断言してくれる帯刀さんがまた嬉しくて、それでいてその言葉にやたらと共感が出来た。
そしてこの子は帯刀さんが父親で幸せだと確信する。

誰よりもこの子のことを大切にして護ってくれて、愛情も沢山注いでくれるからね。
お母さんがダメダメでも大丈夫。
でも私だってこの子のことは、今でも大切に思って愛している。
妊娠していて、凄く嬉しかった。

「帯刀さん、私達もっともっと愛し合いましょうね?夫婦が仲良しだと、お腹の子は安心して幸せを感じるらしいです」
「そう?でもそれは私より夕凪が努力するべきことだよ。そろそろどんな時でも私を一番愛して欲しいんだけれど?」
「うっ・・・そそれは・・・」

甘えるために無邪気っぽく言ったはずの言葉が、またしても墓穴を掘ってしまったようで視線を泳がせ背けた。
そう言われると確かに問題があるのは、優柔不断すぎるアホな私。
帯刀さんは最愛の人だけれど、さっきのように優先順位が入れ替わる時が多々ある。

「私は夕凪のことをこれ以上もないぐらい愛してる。・・・私以外の異性に心を奪われたら駄目だよ。それだけは約束しなさい」
「はい、それは絶対に守ります」

いつもだったら間違えなくお叱りを受けるのに今日の帯刀さんは優しくて、私でも絶対に守れる約束だけさせられる。
それも私を甘やかす一部なのだろうか?



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