夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「マリアちゃんの故郷と家族か。鎌倉初期と言われても、正直よく分からないな」
「私もよく知らない。・・・祟は本当は私達と一緒に行くのは、イヤ?」

凪と帯刀はデパートで仁はアーネストと龍馬を連れどこかに行ってしまい、お兄ちゃんはやることがあると言い自室に戻ったので、私は祟と仲良く対戦ゲームをやっているとフッと祟は他人事のように呟く。
しかし私も記憶がないから答えられず、また少しだけ不安になる。
私にとっては覚えていなくても、故郷で私を知っている人達はたくさんいる。
私を大切に思ってくれてる家族がいると、お兄ちゃんは言っていた。
でも祟にとっては、まったくの未知なる世界。
不安になるのも無理はない。
気が変わることだって、十分ありえる。

「いやじゃないよ。だってボク大好きなマリアちゃんと離れたくないし、こっちの世界になんて未練がないもん」
「未練がない?家族や友達と会えなくなるのに?」

私の心配をよそに祟はさっきと同じようにさらりと答えてくれ私を抱き寄せるけれど、私はその答えに理解できず首を傾げ問う。

祟には私の大嫌いなお兄ちゃんに神子。
それから育ての親がいる。
友達だって私よりたくさんいるのに、なんで未練がないなんて言うのだろうか?

「それは合わせ世になったとしても、同じ結果なんだからいいの」
「え、合わせ世になったら友達に会えない?凪達や仁達にも?」
「そうだよ。凪さんと南方先生は第三者の世界の人間だから分からないけれど、小松さんと坂本さん達は合わせ世にはいられない」
「そうなんだ・・・」

初めて知った真実に、ショックだった。
合わせ世は楽園じゃなかった?

「マリアちゃん・・・、マリアちゃんの世界には、ボクと渓兄それからコロだけじゃだめなの?ボクがいなくなってもいいの?」
「え、そんなの嫌だ。祟がいなくなるなら、私の世界はそれでいい」
「・・・よかった。ありがとうマリアちゃん 」

急に祟が悲しげな口調で恐ろしいことを問われ私は必死にそれを否定すると、ますます強く抱き締められ耳元で囁きキスをしてくれる。
私はまた祟を悲しませるところだった。
お兄ちゃんと祟とコロが私の傍にいてくれれば、私はもう何も望まない。

多くを望むことはワガママで、そんなことを言ってたら本当に大切なことまで失ってしまう。

お兄ちゃんが私に教えてくれた教訓で、今の私ならよく分かる。


「祟、あんまりマリアを不安にさせるな。俺達はこれから最高の終わり方を目指していくんだから」
「あお兄ちゃん?」
「渓兄、それ本当にできると思うの?」
「正直わからないが、やるだけはやるつもりだよ」
「・・・半信半疑で信じるしかないね」

諦めかけた時お兄ちゃんがやって来て、祟とは異なる矛盾を言う。
その選択は欲張りでワガママなはずなのに、お兄ちゃんには何か勝算があって言っているのだろうか?
だからなのか祟は、渋々お兄ちゃんに同意した。
これで一先ず安心?

「それにしても祟。父上に認められるように、今から体を鍛えとけよ。熊野の男は強くなければいけないんだからな」
「う・・・、マリアちゃんのためにがんばる・・・」

ホッとしてるのも束の間でお兄ちゃんが楽しそうにそう言うと、祟は笑顔を引き攣らせながら深いため息を吐くのだった。

お父さんは私と祟の仲を認めてくれない?
私が祟の良い所を沢山教えれば、認めてくれるだろうか?



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