夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「そのお粗末な頭は、一体何百回言えば理解してくれるの?」
「え〜と、・・・千回とか?」
「いい加減にしなさい」

バシッ


当然デパートに行くわけなくどこかの廃墟に辿り着いたと思えば、帯刀さんの雷が落ちげんこを喰らう。
ふざけた答えがいけないと思うものの、半分以上は本心だったりする。
考えるよりも好奇心が明らか強いのだから。
そして帯刀さんに怒られ初めて気づく。

わぁ〜最悪だ。

「たけどマコトを助けることは、帯刀さんも了承済みなはずですよ」
「あの時と今とじゃ状況が違うでしょ?」
「それはそうですが、今後絶好のチャンスがあるんです。クロちゃんに雨を降らしてもらえばすべて問題解決」
「は?私にも分かるように説明しなさい」

帯刀さんの反応が分かっていても苦し紛れの口答えをする私に、こめかみをピクピク痙攣させながら説明を求められてしまう。
これを言っても納得してくれそうにもないけれど、今のところこれが安全で確実な救出方法なのだ。

「実は甲良屋敷一体で大火事が起きる予定なんです。そこでマコトは死ぬんですが、クロちゃんの能力で雨を降らしてもらえればマコトだけではなく多くの人達を救えると思います」
「そう。それは夕凪にしては名案だね。その時は私も同行するから、絶対に一人で勝手な行動は取らないこと。いいね?」
「え、あはい」

思いとは裏腹に私の熱意が珍しく伝わったのか、そこは想定内の条件付きで認めてくれる。
そんなこと言われなくても、初めっから帯刀さんについてきてもらうつもりだった。
それは約束だから。

「私だって鬼ではないのだから、ちゃんとした策があれば反対はしないよ。でも夕凪が考える策は荒っぽいのが多いから、苦労が耐えないけれど」
「・・・・・・」

優しい言葉だと思いきや、ため息混じりの図星なため言い返せない。
言い返せるとしたらそうでもしないと解決できないだけれど、それを言えば雷は更に悪化するだろう。
だから黙っている。

「まぁそれが夕凪なのだから、仕方がないのだけれどね。ただこう言うことはまず私に相談してからにしなさい。・・・面白くないよ」
「そうでしたね。すみません」

ここでやっと怒っている本当の理由が分かり私はそう言った後、いたずらっ子のように帯刀さんの唇を奪い抱きつく。

こんなことで拗ねてしまう帯刀さんが、やたらに可愛くて仕方がない。
なんでも私の一番にならないと気がすまないんだよね。
でも私も同じことをされたら、やっぱり拗ねちゃうかも知れない。

「まったくこう言う時だけ、対応はうまいんだからね?いつもこう言う風な反応をして欲しいのだけど」
「努力します。帯刀さんも口づけと抱き返して下さい」
「いいよ。だったら目をつぶりなさい」
「はい」

どこか呆れているようでも嬉しそうな帯刀さんに、私は更に甘え可愛らしくおねだり。
それで言われた通り目をつぶると同時に、再び私達の唇は重なり舌も絡ませる。
こうなったらもうここがどこであろうと構わない。
そして望み通りギュッと抱き締めてくれ、その静かな雰囲気に自然と流されるのだった。

幸いここには私達だけしかいないのだから、ちょっとぐらいこれ以上のことをしても大丈夫だろう。


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