夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「小松殿と小松、待って下さい。オレをマリアに会わせてくれないでしょうか?」

チナミちゃんに呼び止められ反射的に振り代えると、そんなことを率直に頼まれる。
息が荒くて真剣な表情で、ただならぬことだってのは分かった。
さっきの口調からマリアちゃんは敵側だって理解している見たいだけど 、一体何を話すんだろうか?

「マリアちゃんに無神経なこと言わないって約束できる?」
「ああ、約束する」
「ならまず私たちに話なさい。もちろん告白類いな物であれば、話さなくてもいいけれど」

真剣だったから嫌な予感がして予め釘を差しておくと、帯刀さんも同じ予感がしたらしく内容を求める。
そこまではやりすぎだと思うけれど、プライバシーは除外だからまだまし?
帯刀さんも心配しているんだ。

「マリアは純粋で心優しい女性なのに、どうして合わせ世にしようとしているのかが知りたいんです」
「祟くんと生きたいからだよ。マリアちゃんは合わせ世じゃないと、生きていけないみたいだよ。元の世界に戻ったら戦の道具に使われて、最終的には用済みになって殺されるんだと思う。だから渓はそれを回避するために、合わせ世の道を選んだ」
「あ・・・」

私の柄にもなく分かりやすい説明に、チナミちゃんは絶句する。
これでチナミちゃんも理解してくれたはず。
合わせ世にするのは悪いことだけれど、事情が事情なだけに頭ごなしに否定はできない。
だってそれでも否定するって事は・・・。

「それでもチナミは説得するの?マリアくんは優しすぎるから、率直に『君が死ねば二つの世界の住人が幸せになれる』と言えば協力してくれるんじゃない?」
「・・・・」
「帯刀さん、言い過ぎです」

チナミちゃんに更なる厳しく問う帯刀さんを、私はチナミちゃんを庇うように止める。
すっかり凹んで小さくなるチナミちゃんが可愛そうで見ていられない。
きっとチナミちゃんはマリアちゃんを改心させるつもりで言っただけで、追い込むつもりはなかった。

なんで帯刀さんは、そう言う意地悪を言うんだろう?
そうならないようにみんなが幸せになれるルートを探そうって言うことになったのに、さっきから帯刀さんはラスボスみたいな事ばかり言っている。
確かにそれはゆき達には内緒と言うことになったけれど、これ以上敵対する必要はない。

「・・・チナミは八葉なのだから、神子殿の傍にいてあげなさい。ただでさえ龍馬と南方先生は中立立場だと思うけれど、サトウくんは完全にこちら側になっているのだから」
「しかしオレは・・・小松と兄上を救い出す約束をしています」
「へぇ〜、そう・・・」


最後の警告とばかりに帯刀さんはチナミちゃんにそう優しく言うけれど、それはどう考えても厄介払いである。
つまり帯刀さんは、チナミちゃんに協力して欲しくないと言うこと。
なのにチナミちゃんは切羽詰まったように余計なことを言って、帯刀さんの笑顔に最大級のブリザードがは知り私を睨み付けた。

怖い
とてつもなく怖い。

私の顔からさっと血の気が引く。

「小松殿、いかがなされましたか?そして小松はなぜそんなに脅えてる?」
「チナミ、マリアくんとは私達の世界で会ってちゃんと話なさい。私は妻と大切な話があるから、これで失礼するよ」
「あの〜、私はもう帰りたいのですが・・・」
「それは駄目。さぁ行くよ」

何も知らないチナミちゃんの無神経で気が聞かない言葉に、帯刀さんはそれだけ言い切り嫌がる私を無理矢理どこかへ連行する。



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