夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「現代で帯刀さんとデート出来るなんて夢みたいです」
「そうだね。その点は渓に感謝だね」

渓の提案で少しの間だけ現代デートを楽しむことになり、復元していると言うデパートへ行くことになった。
外の風景は見渡す限りほとんどが相変わらずの砂漠なんだけれど、所々植物が植えられていて前よりか環境は豊かになっている。
これも渓の配慮かな?
考え方はずいぶん残酷で卑劣だけれどそれはマリアちゃんを守るだけのことで、そこにたどり着くまでにきっと悲惨な日々を送っていたと思う。
本当は優しい人だって、私はちゃんと知っている。

「わぁ、スノードロップだ。可愛いですね」
「スノードロップ?それは未来の花?」
「未来って言うか海外の花です。アーネストなら知ってますよ」

白くて小さな花を咲いているのを見つけた帯刀さんと何気なく会話を楽しんでいたはずが、いきなり帯刀さんはムッとして私の唇を塞ぐ。

すみません。
また私は無神経な発言をしてしまったんですね。

「そんなに夕凪は私を嫉妬させて楽しいの?無神経ではすまされないよ」
「すみません」

今はただ謝るしかなかった。
意味がまったくないと弁解しても、それを前提に怒っているのだから意味がない。
しかもここで甘えれば逆効果だし、そもそもここは誰もいなくても外。
万が一ゆき達に見られでもした

「え、小松さんに奥さん?なんで二人が?」

思っている側から本気で驚いているゆきに声をかけられる。
やましいことはなにも(終わった)なくても、変な汗がたっぷり出てしまう。
振り向くのが怖い。

「これはこれは神子殿ご一行。こんな所で会うとは奇遇ですね」
「いや、奇遇とかそう言う問題じゃないだろ?」
「マリアと藤原と一緒なのか?」

涼しげに答える帯刀さんに都は誰もが思う突っ込みを入れ、私を知っているチナミちゃんが深刻そうに問う。
口止めを固くしてある手前、四神には触れないでいてくれる。

「まぁそう言うことになるかな?」
「どうして?マリア達がやろうとしていることは間違ったことなんですよ」
「今はまだそうとは言い切れませんが、もしそうなったとしても後悔はしません。私は妻と共に生きる道を選びます」
「合わせ世になったら小松さんと奥さんも生きられないんですよ」
「それはどうでしょう?軽蔑するならしても構いません。では私達はこれで」

なんて言っていいのか分からず曖昧に答えムキになるゆきに対し、帯刀さんは最後まで冷静に答え続け私の手をひっぱりこの場を去ろうとした。
ゆきだってらしくないけれど、失恋確定してすぐだからしょうがないのかも?
でも誤解されたら嫌だな。

「私達は私達のやり方で未来を作ろうとしているから、今はそっとしといて下さい」
「それどう言うことですか?ちゃんと訳を説明して下さい」
「ゆき、しばらく様子を見よう。誰にだって詳しくは言えない事情だってあるはずだろう?」
「あ、そうだね・・・」

都のおかげでゆきの質問攻めは終わりホッとする。
隠し事をたくさんしているゆきには、この言葉が効果抜群らしい。
もしかしたら都にもなにか隠し事があるから、こんなこと言うのかも知れない。

「ねぇゆきにとって都はどんな存在?」
「え、親友ですけれど」
「そうなんだ。都にとっても?」
「当たり前だろう?」

私のいきなりの問いにゆきと都は即答したけれど、私にしてみば意外な答えだった。
親友なのに、肝心なことを隠している。
それでも親友。
二人に親友と言う定義を解いてみたいよ。
友人より親しい友人だったり。

「それがどうしたんですか?」
「親友がいたらどんなに辛いことがあっても、苦しみを分かち合えるからいいよね。親友ならどんなことでも話せるんだから」
「・・・・・」

ズバッとは言えず遠回しのつもりで言えば、二人は気まずそうに黙り視線を泳がす。
これですべてが分かった。

「夕凪、行くよ」
「はい」

これ以上言ったらさっきから黙っている瞬が怖そうなので、帯刀さんの言うことに従い手を取り四人と別れた。



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