夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「最初に言っておきますが俺達がやろうとしていることは間違ったことですが、俺にとっては正しいことだと思っています」
「最初から矛盾した言い方をするね」

私達は用意された席を座りまずは紅茶を飲み一息付いたところで、渓は真顔で意味深なことを言い帯刀さんはクスッと笑いそう答える。
相当難しい話らしく、真剣に聞いていないと取り残される気がした。
マリアちゃんお手製のアップルパイは、我慢して後で食べた方が良さそう。

「この世界は例え今の危機を乗り越えたとしても、滅びの道に進みますからね。ある組織によって独裁政治が始まります」
「国ではなく組織なんですか?」
「はい。その組織は時空移動を可能とし、過去を変えようとしています」
「・・・・・・」

私が好きな裏社会マンガ並みの設定が凄すぎて何も言えなかったけれど、ゲーム設定の異世界なため信じることはできる。
しかしそれは私と帯刀さんだけであって、龍馬達は呆気に取られていた。
普通は信じられないか。

「俺達の世界はどうなるんだよ?」
「無事だと思います。燭龍を倒した時点で、二つの世界は完全に別の時間を刻みます」
「だったら俺達の世界にお嬢達を避難・・・」
「全世界の人、数十億人をですか?」
「うっ・・・桁が良くわからんが、そんなの無理だよな。しかしだからと言って見捨てるわけにはいかんだろう?」

龍馬らしい反応で無理だと分かっても、別の可能性を考える。
確かに合わせ世にするにはあまりにも犠牲が多すぎるけれど、そもそもどうしてマリアちゃんは合わせ世でしか生きられないの?
マリアちゃんは祟くんと違って、あっちとこっちの世界の合の子。
普通なら生きられるはず。

「別の可能性なんてないよ!だって組織の陰謀を阻止する方法なんてないんだからね」
「あるとしたら、時空移動を可能とする鍵であるマリアを殺すこと」
『!!』

衝撃な渓の台詞が私の疑問を解決し、思わずマリアちゃんを見つめてしまった。
そのマリアちゃんは怯えた瞳でうつむき何も言わず、コロをギュッと抱き締めていた。
だから二人は祟くんと組んで、合わせ世にしようとしている。
そう言う事情なら良くわかるな。

「数十億人と一人の命。誰に聞いたって全世界の人の命を優先するに決まっていますが、俺にしたらマリアは全世界の人の命なんです」
「そうだね。私だってもし帯刀さんの命と世界中の命を天秤に掛けたとしたら、間違ってると言われたって迷わず帯刀さんを選ぶと思う」
「私もそうだよ。夕凪がいない世界など私には考えられない」
「二人ならそう言ってくれると思っていました」

私だけではなく帯刀さんもまったく同じ気持ちだったので一安心。
渓もどこどなく安堵していた。

「ですが私達の世界にしてみれば、渓さん達は敵になりますよね?」
「そうだな。俺達はお嬢の味方」
「私は悪いけれど、渓の味方になるね。二つの世界が完全隔離されると言うことは、夕凪との永遠の別れだからね」

事情が分かったとしても協力はできないのが現実でアーネストと龍馬は厳しいことを突きつけたが、帯刀さんだけは正反対のことと分からないことを言う。
二つの世界が完全に隔離されても私には関係がない。

「さすが帯刀さんですね。凪さんが今ここにいること事態も時空のみだれが原因ですから、同じことだと思います」
「あっ!?」

やっぱり帯刀さんは優秀で私は大馬鹿だ。
言われて初めて理解する。
他人事ではなく私達にも関係が大ありだから、 渓は私達に話したんだ。
でもそれってどちらにしても、私達の未来はないのかも知れない。
私達は合わせ世では、生きられないのだから。
そう思うと目の前が真っ暗になって、それ以上話を聞くのが怖くてたまらない。
永遠に帯刀さんに会えなくなったら、間違えなく私は死んでしまう。



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