夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
4ページ/48ページ


「いいえ。ただ凪さんの子育てを想像したら、なんだか寒気がしただけです」
「何それ?酷い」

心配に思うだけ無駄で、聞かなければ良かったと後悔した。

無性に、腹が立つ。

「それなら梅がいるから、大方は大丈夫だよ。それに私もね」
「うっ・・・フォローしているようでされてない」
「凪さん、大丈夫ですよ。凪さんならいい母親になれますよ」

帯刀さんにまであまり信用されてなくて、一瞬で凹む私を唯一信用してくれる南方先生が励ましてくれる。
それは明らかに咲ちゃんと一緒で誉めすぎだけれど、そう言われると自信がつく。
これから頑張ろうと思えてくる。
それなのに

「Dr.南方もいいますね。ある意味私よりひどい言い方ですよ?」
「え?私は本当のことを言っただけですが・・・」
「無自覚ですか」
「今日のアーネストって、いつも以上に意地悪だね?行きましょう・・・あ?」

南方先生にまで嫌味を言い始めるアーネストにこれ以上関わると、ストレスが貯まり胎児に悪影響だから別れようとして視線を変えると、ゆき達現代組と総司くんとそれからリンドウがこちらに近づいて来るのが見えた。
反射的に帯刀さん背後に隠れる。

ついに風花記に突入・・・。

「小松さんとアーネスト。江戸にいたんですね。凄い偶然」
「それはこっちの台詞だよ。しかも将軍の目付けと一緒とはね」
「小松さんはリンドウさんのことを知ってるんですか?」
「まぁね。彼は星の一族の末裔らしいから、先日歴代の白龍の神子についていろいろと教えてもらったんだよ」
「ああ。随分熱心に調べているようだけれど、まさか神子殿に一目惚れでもした?」
「冗談。私は妻にしか興味はないからね。それに妻は私の子を身籠っているんだよ」

ゆき達も私達がここにいることに驚いていてゲーム通りの会話を始めるが、すぐに違う展開になり帯刀さんとリンドウは面識があるようだった。
面白そうに冗談にはとれないことを言ってくるリンドウに、帯刀さんは私を抱き寄せ涼しげにさらりと全否定してくれた。
嫌な思いをしなくてすむ。

「そうだったね。君達夫婦の仲は幕府の中でも有名で、なんでも和の宮様の憧れだとか」
「それは光栄だね。それで用件は何?」
「それは・・・え、あなたが八葉?」

さらりと恥ずかしい内容は流されてしまい話は本題に戻るのだが、南方先生を見たゆきは混乱しているようで話は止まる。
ゆきが見てきた未来は私がいない世界なんだから、当然天の白虎は帯刀さんで南方先生を知らない。

「私は南方仁と言って医師をしています」
「へぇ〜あの有名な神の手を持つと言われている名医が、八葉とはね。八卦は乾。天の白虎だ」
「そそんなことないですよ」

南方先生が名を名乗るとまずはリンドウは物珍しそうにそう誉めるのに、南方先生は恥ずかしそうに髪をかきながら謙遜する。
それはいかにも南方先生らしいけれど、やっぱりもう少し自信を持っても良いと思う。
もちろん医者の卵である瞬も、南方先生に興味を示すのは言うまでもない。

「でも天の白虎は小松さんで・・・天の玄武はアーネストだよね?」
「神子殿、何を訳の分からないことを言ってるの?確かに天の玄武は英国の通訳殿のようだね。外国人の八葉とは珍しい」
「すみませんゆき、私はあなたの八葉にはなれません。それでは私は忙しいので失礼します」
「え、アーネスト?ちょっと待ってよ」
「おいゆき?」

以前から八葉になるのを拒んでいたアーネストは本格的に任命されても、考えることもなくきっぱりと断り私達の元から去っていく。
それをゆきは慌てて追いかけ、お付きの人達も一緒に追いかけあっと言う間にいなくなる。

・・・変なアーネスト?



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ