夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「皆さんいらっしゃい。ボク、桐生祟です」

渓と四神の力で再び訪れたゆき達の世界で、ニコニコ笑顔の祟くんに歓迎され自己紹介をされた。
前に会ったと言っても一瞬だったから、これが正しい挨拶なんだと思う。

だとすると私も自己紹介した方がいいよね?
祟くんのこと結構弟として好きだし、何よりもマリアちゃんの彼氏だから仲良くしたい。
敵になんてなりたくないよ。

「私は夕凪。よろしくね。祟くん」
「はい、凪さんのことはマリアちゃんからいろいろ聞いてます。もちろん皆さんのことも」
「そうか。お前が祟でお嬢の・・・」

まだショックが残っている龍馬は、祟くんの言葉にガクンの肩を落とし寂しそうだった。
相当のダメージがあると言うか、それだけ龍馬はゆきのことが本気なのか。
可哀想だから、これからはちゃんと応援しよう。

「龍馬さんは、お姉ちゃんのことが好きなんだね?本当にお姉ちゃんはモテるんだから。だったらアーネストさんも?」
「違いますよ。確かにゆきは可愛らしくて優しい人ですが、私にとってはただの友人です」
「ならマリアちゃん?」
「それも違います」
「そう。ならいいや」

アーネストの口調に自分には関係ないと覚った祟くんは、興味がなくなったのかそれ以上深くは聞かずその話は中断された
マリアちゃんとゆき以外の人なら興味がなくても、男の子ならこれが当たり前の反応かもしれない。
それでも興味があるのは、噂話が好物な女性ぐらいだ。
かく言う私もアーネストの想いの人妻が気になっている。
アーネストのことだから、魅力ある大人の女性だろう。


「それで祟、マリアは大丈夫か?」
「うん。ちゃんとボクの気持ちを伝えたよ。そしたらマリアちゃん、笑顔を初めて見せてくれたんだ」
「それは本当か?」
「うん。すごく可愛くて、ますます好きになっちゃた」

一行に来ないマリアちゃんを気にして元気なく渓が問うと、祟はテーションを上げて嬉しそうに今までなかったことを答える。
言うまでもなく渓は驚き、私も驚き嬉しくなった。
マリアちゃんの表情がようやく完全に蘇り、一番最初が笑顔だったから。
私も見てみたい。

「そうだろう?それでマリアは?」
「みんなが来るからって、おもてなしの準備をしてるよ」
「・・・凪さん、あなたは変態ですか?その目は変質者の目ですよ」
「サトウくん、失礼なことを言わないでくれる?そう言うことは私だけが許される特権だからね」
「・・・・・・」

いつものように幸せで可愛い妄想をしているとアーネストから軽蔑されてしまい、帯刀さんは私を庇ってくれるけれど否定はしてくれず肯定されてしまった。
それでようやく我に返るけれど、それは自分でも真実だと思うため何も言い返す悲しい思いをするだけ。
こんなこと今まで何度もあったにも関わらず、私って奴はまったくと言って良いほど成長していない。
ダメ人間。

「それではリビングで詳しい話をしますから、みなさんどうぞこちらへ」
「そうだな。そうしよう」

また渓に最大級の気を使わせてしまい、私達はリビングに通されいよいよ話は本題へと進むことになる。



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