夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
38ページ/48ページ

「凪さん、帯刀さん、お帰りなさい」
「え、渓?あただいま」

江戸城から帰宅すると渓一人に出迎えられ、しかもただごとではないご様子。
本能的に帯刀さんの手を握り、渓を警戒してしまう。
別に怖いとか殺気とか感じてるわけではなく、なんか嫌な予感がする。

「大切な話があるので、一緒に来てください」
「大切な話?どこに行くの?」
「異世界。二人は一度行ったことがあるはずです」
「ああ、あそこね。私達も聞きたいことがあるから、別に構わないよ」

私の代わりに帯刀さんが渓と話を進め、トントン拍子で話がまとまる。

つまり渓はついにすべてを話して、私達の判断を聞くことにしたんだ。
敵か味方になるかわから・・・私達を味方にする自信があるとか?
だとしたら、どんな?

「ありがとうございます。龍馬さんと南方先生とアーネストもいますので、まずは俺の部屋に来てください」
「え、アーネストも?よく来てくれたね?」

最近ご無沙汰になっていたアーネストの名が上がり、意外すぎて驚いてしまう。
仕事が忙しいらしく、あの日から会っていない。
だから、ちょっと嬉しい。

「ええ、ちょうど仁友堂に来ていたので、事情を話したらあっさりと承諾してくれました」
「そうなんだ」

アーネストにとっても重要なことに、ますます興味がわく。
だけど渓達がやろうとしているのは合わせ世計画であって、普通であれば私達の敵になるはずなのにどういうことなんだろうか?





「アーネスト、久しぶり。元気だった?」
「はい。凪さんは相変わらず元気そうですね」

渓達の部屋に通されアーネストを見つけた私は早速声を掛けると、相変わらずの王子さまスマイルを浮かべ答えが返ってくる。
アーネストも相変わらずのようだ。

「・・・マリアくんが、いないみたいだね?まだ帰っていないの?」
「いいえ。マリアは先に帰って祟と一緒だと思います。俺が無神経なことを言ったばかりに不安にさせてしまったんですよね」
「渓が?珍しいね。でも祟くんが一緒なら、心配することないと思うよ」

本当にシスコンの渓がマリアちゃんを不安にさせ・・・そう言えば以前にも似たことがあった。
・・・意外にも渓は、マリアちゃんを度々不安にさせている?
マリアちゃんって繊細だから、ちょっとしたことで傷付いて落ち込んでしまう。
しかも自分のせいだと誤解して。

「凪、お前祟って奴のこと知ってるのか?」
「え、まぁ・・・。マリアちゃんからいろいろ聞いてるからね」
「そうか。そうだよな。マリアは凪のこと姉のように慕ってるしな」
「龍馬?」

祟くんのことに不信に思われなんとか回避するも、返ってきた龍馬の反応は悲しそうな物だった。

なぜ龍馬はそんな顔をする?
・・・・・・・。
もしかしてマリアちゃんの不安と、龍馬のその反応は関係あるとか?

「ねぇ渓、龍馬ともなんかあった?」
「実は白龍の神子が祟に片想いをしているらしく、それで龍馬さんはショックを受けたらしいです」
「え、ゆきが祟くんに片想いって・・・」

そう思ったら気になって渓に小声で耳打ちすると、返ってきた答えは確かに爆弾級だった。
びっくりし過ぎて開いた口が塞がらない。

ゲームと違ってゆきにはもう本命がいた。
その本命が敵である祟くん。
しかも祟くんにはもう恋人がいる。
それでいて龍馬はゆきが好き。
だから龍馬は元気がない。
でも龍馬はまだチャンスあるような気がするんだけれど、それでもやっぱりショックか。

「龍馬、そんなに落ち込まなくても、今がチャンスという物だよ。弱った女性に優しい言葉を掛ければ、簡単に落とせるからね」
「帯刀さん、その言い方はどうかと思いますが?」
「そう?」

話がだんだんずれ始めてしまい、本題に戻りずらくなっていく。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ