夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「祟くん、何してるの?」
「見てわからない?彼女とデート」
「彼女・・・」
「祟、こんな所でいちゃつくな。迷惑だ」

とにかく悲しそうでショックを隠せない感じのゆきと普段通りの都の声が私達に向けられ、視線を向ければ都とゆき以外に祟のお兄ちゃんとさっきの男性それからチナミもいる。
チナミもゆきと同じで、ショックのあまり唖然としていた。



「チナミ?どうしたの?」
「え、こいつがチナミちゃん?女の子じゃなかったの?」
「違う。チナミは私の普通の友達で、祟は私の自慢の彼氏」
「うっ・・・」
「なんだ。普通の友達だったら、別にいいや」

とんちんかんなこと言い出すチナミと祟。
祟とチナミに改め紹介し合うと満足そうに微笑むけれど、チナミはますますショックしてなにも言わない。
ますます分からない。

「祟くんが消えない未来を、私達と一緒に探そうよ。私達あんなに仲が良かったじゃない?」
「あんなのふりだよ。本当はお姉ちゃんなんか大嫌いだった。ボクの悩みも苦しみも気づいてくれようともしないで、いつも幸せそうにしてさ」
「それは教えてくれなかったから、分からなかっただけ」
「マリアちゃんは隠してたって、ちゃんと気づいてくれて心配してくれるよ。ボクの彼女は、とっても優しくて気がきくんだからね」

神子の言葉に祟は全く耳を貸さず、憎しみを込めて言った後私の手をギュッと握りしめる。
心配しなくても大丈夫と言われてる気がした。

「気づいてあげられなくってごめんね・・・。私祟くんのことが、昔から大好きなの。だから・・・」
「だったらお姉ちゃん、ボクのために死んでよ」
「祟、いい加減にしろ」

泣き出す神子はなぜか祟に告白するけれど、祟がそう言うと祟のお兄ちゃんに殴られる。

「ワンワン」
「祟のお兄ちゃんの馬鹿。お兄ちゃんの癖に祟の苦しみを分かろうとしないなんて、そんなのお兄ちゃんの偽者で最低」
「・・・・」

と私とコロは頭に血が登り、祟のお兄ちゃんを睨み強く批判する。
確かに祟は言い過ぎたと思うけれど、それでも手をあげるなんて最低のやることだ。
だから祟のお兄ちゃんは大嫌い。
私が祟を護って見せる。

「マリア、瞬兄を悪く言わないで」
「ほらね。お姉ちゃんはいつも優等生の良い子ちゃんだから、そうやってすぐ正義感ぶる。ボクが好きだったらみんなを敵に回しても護りたいと思わないの?」
「そんなのできないよ。だって祟くんは間違ってることをやろうとしてるから。二つの世界を消すなんて、賛成できるはずがない」

何も知らないゆきは祟のお兄ちゃんを庇い、祟の言うことも真っ向から否定。
祟が好きなのに、祟の味方にならない。
しかも理由も知らずに否定する。
優等生で良い子でいたら、本当に大切なものは守れない。

「自分が龍神の神子だから両方の世界を救えるなんて思っているみたいだけれど、残念ながらこっちの世界はそんな単純じゃないんだよね?」
「え、それどういうこと?」
「お姉ちゃんが知らない漫画や小説のような裏の世界が現実にもあって、近い未来また世界の危機が訪れ崩壊するかもしれないってこと」
「祟くん、何言ってるの?漫画の読みすぎだよ?そんなことあるはずないじゃない」

ここまで教えてもゆきは分かろうとせずまだ否定し続けている。
それだけ平和な世界に育ったと言うことだから、これ以上話しても分かってもらえない。
それは仕方がないこと。

「お姉ちゃんって本当に馬鹿だよね。マリアちゃん、ボクらの家に帰ろう」
「うん。・・・都は私達の敵になる?」
「え、まあ・・・。でもお前達の考えは間違っているとは思うけれど、お前達にとってはそれが正しいのかも知れない」

あんなに仲がよかったお兄ちゃんと都が敵になるのは悲しいことでも、都はお兄ちゃんを否定することはなく少しだけホッとする。

都はゆきや祟のお兄ちゃんとは、少しだけ違う。
それが分かっただけでも、良かった。



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