夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「お嬢、おちつけ。マリアが怖がってる」
「そうだぞ?ゆきの言うことは分かるが、マリアの反応は普通だと思う」
「桜智さんは仲間なのに、そう言う良い方は良くないと思う。桜智さんは優しくて頼りになる人だよ」
「ゆきちゃん、ありがとう。君はなんて優しいんだ」

どうやら都も私と同じような印象を抱いているようで私を庇ってくれるけれど、それでもゆきは強情に言い張り男性を喜ばせ自分の世界に入って行くのが分かった。

ゆきはどうして、男性がおかしいと気づかないんだろうか?

「・・・・。マリア、夢の屋のことは気にするな」
「うん、分かった。気にしない」

言われなくても私は、もう男性を気にしないことにした。
それからやっぱり私はここにいたらいけない。
これ以上いたらきっと変なことに巻き込まれる。

「私、帰る」
「え、おしること芋羊羹は?」
「もういらない。龍馬にあげる」
「あ、マリア待って。私の話を聞いて欲しいの」

だから私はそう言い席を立つけれど、ゆきになぜか止められる。
予感はすぐに的中で無視をしたかったのに、出来そうもない空気だった。
仕方がなく私は再び席に座る。

「何?」
「マリア、私と一緒に白龍の神子をやって欲しいの」
「やらない。私、ゆきとは仲良くできない」
「どうして?私の事がそんなに嫌い?」
「うん。祟が嫌いな人は私も嫌い。祟のお兄ちゃんはもっと大嫌い」
「え・・・そんな・・」
「あ、ゆき?」

ハッキリ言ってもゆきはしつこくて変な問いに私は即答すると、ゆきは涙を流し無言のまま外に飛び出してしまった。
都と男性と祟のお兄ちゃんは、ゆきの後を追う。
これでようやく静かになって本当に帰ろうと思ったけれども、今度は龍馬が私の腕を強く掴み睨み付ける。

「マリア、そんなこと言ったら駄目だろう?お嬢のこと何も知らないのに、どうして嫌いなんだ?」
「・・・だってゆきは、私の好きな人の敵だから。ゆきが私の好きな人を滅ぼそうとしている」
「お嬢がそんなことするはずないだろう?二つの世界を救うため一生懸命」
「二つの世界を救うことは、俺達を滅ぼそうとしていることなんですよ。マリアと祟は合わせ世でしか生きられないんです」

私の言葉よりゆきを信じ肩を持つ龍馬だっけれど、お兄ちゃんが来てくれ私より分かりやすい説明をしてくれる。

これで私が説明する必要はない。
説明が苦手だからよかった。

「本当はもう少し準備をしてから話をしたかったのですが、こうなった以上今夜すべてをお話いたします」
「今じゃダメなのか?」
「はい。凪さんと帯刀さん。それから南方先生にも話したいので、それまで待ってくれませんか?」
「ああ、そうだよな。分かった」

冷静なお兄ちゃんの受け答えで、龍馬もようやく冷静に戻り私は自由になる。

龍馬はゆきの味方なのは、ゆきのことが好きだから。
それは当たり前のことで私も分かるけれど、龍馬の親友である凪が可愛そう。
凪と龍馬は敵対することになったら、私は悲しい。

「それにしてもまさか白龍の神子が祟のことが好きだったとわね。あらゆる意味で厄介だよ」
「え・・・」
「なんだって?」

予想もしてなかったお兄ちゃんの言葉に、私だけではなく龍馬までも驚き声をあげた。
好きな人に好きな人がいたらショック。
私も祟は私の彼氏だけれど、心臓がチクリと痛みを感じた。
そうが尊幸せになるのなら良いと思っているのに、そう思うと悲しくて淋しくて今すぐ祟に逢いたくなる。




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