夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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梅さんから頼まれたお使いが終わりこの前お兄ちゃんと来たお店に行くと、龍馬と都と祟のお兄ちゃんとゆきがいた。
他にもう一人緑髪のワカメみたいな男性がいて、この前と同じようにゆきを変な視線で眺めている。
どう言う訳かゆきは気にしていないようだったけれど、私だったら絶対気になり近づきたくない。
お兄ちゃんからゆきとはあまり関わるなと言われているため、店内には入らず別のところへ行こうとしたのに龍馬と目があってしまった。

「マリア、こんな所に一人で来るなんて、珍しいな?」
「ワンワン」
「すまん、お前が一緒だったな」

愛想よく龍馬は私に声をかけくるけれどコロのことを忘れていたらしく、コロは怒り私に寄り添い抱っこを求める。

「梅さんのお使いの帰り。お兄ちゃんは用事があるって言ってた」
「そうか。マリアは偉いな。なんでもおごってやるから、俺の隣に座れ」
「え、うん」

断りたかったけれどお腹が空いていたから、龍馬の言う通り隣に座る。
龍馬がいれば、安全だ。

「何食たいんだ?」
「私はおしるこ。コロは芋羊羮」
「わかった。おばちゃん、おしること芋羊羮追加な」

食べたいものをすぐに言うと、龍馬はおばさんに元気よく注文してくれる。

「かしこまりました。あら、あなたは小松様の所に住んでる?」
「はい、こんにちは」
「こんにちは。平田さんは元気かい?」
「うん。猫ちゃんって言う友達ができて、毎日を楽しそうにしてる」
「ワンワン」
「コロとも仲良しだって 」

龍馬から注文を受けたお店の人は愛想よくこちらにやって来て、平田さんのことを聞くから私が感じた現状を答える。

平田さんは人懐っこくって、元気いっぱい。
それは猫ちゃんも同じで、凪の家はいつもにぎやかだ。
そんな日常が私は好き。

「それはよかった。あの子が幸せなら私も嬉しいよ」

と、お店の人は笑顔で言い厨房に戻っていく。
平田さんのことを本当に心配してたことが分かる。

「そう言えば、凪は家か?」
「違う。帯刀と一緒に江戸城に行った。友達に会うんだって」
「友達。凪も大したもんだよな。将軍の正妻を友達にするんだから」
「どうやら噂は本当のようだね。薩摩家老の正妻は和の宮様から慕われていることは」
「・・・墓穴を掘って怒らせないといいんだか」

やたらに感心する男性とは違って、龍馬はとてつもなく心配をしているようだった。
私も凪のことを尊敬している。

「小松さんの奥さんはそんなにすごい人なんですか?」
「まぁあいつの正妻なんだから、普通じゃないことは確かだろうな」
「彼女の名は夕凪。西郷隆盛の遠縁で小松さんとは恋愛結婚。私がゆきちゃんに夢中のように彼女は小松さんを夢中にさせているようで、良く手を繋いで町中を歩ているらしい。・・・私もいつかゆきちゃんと・・・ああ〜・・・」
「お前は無理だ。と言うかあっちは相思相愛で、お前は完全な片思い。一緒にしたら、迷惑だって」

男性はまともに答えるもののやっぱりすべてがおかしくて、都は痛い視線を向けながらごもっともな回答をする。
でも本人は、話を聞いていないようだった。

「・・・変な人・・・」
「マリア、桜智さんは変な人じゃない。失礼なことを言わないで」
「・・・・・」

思わず小声で印象を呟けば、男性ではなくゆきがムッとして怒り強く否定する。
それがあまりにも怖くて、無意識に龍馬の袖を掴み下を向く。

お兄ちゃんの忠告を無視したから、こうなったんだ。



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