夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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あれ?
そう言えばリンドウって一橋公の部下みたいな物だから、紀州派である家茂公と対立してなかったっけぇ??

五人仲良くお茶を楽しむことしばらくして肝心なことを思い出し、この風景に今さらながら違和感を感じ始めた。
だけど今の所はそんなことはまったく感じられない。

「所でリンドウ。君の所にいる江戸で話題の龍神の神子はどんな感じの人なのですか?」
「神子殿はそうだね?芯が強くて何事にも真面目で、たまに空回りしてしまう所が玉に瑕の女性ですね。もっと気楽にすればいい物のすぐに一人で背負い込む」
「そうですか」

そんな私の違和感など知るよしもなく今話題のゆきの話になり、リンドウは誉めているのか貶しているのかとにかく全体的にきつい評価をする。
それは心配しているのかも知れないけれども、私もこの意見には同感だ。

ゆき達ご一行(アーネスト除く)は順調に江戸の怨霊を浄化しまくっていて、今やすっかり時の人でどこへ行ってもゆきの話でもちきりだった。
ゆきに対して警戒することがなくなった私は平然として聞いていられるけれど、ゆきのこの後を知っている手前多少心配だ。
すでに力を使いすぎて、消えかかっているのだろうか?
でもまぁ嫌いな奴の心配したって、余計なお世話かも知れないけれど。

「凪さんは龍神の神子とお話をしたことはありますか?」
「ちょっとだけなら。南方先生は八葉の一人なんですよ」
「そうなのですか?さすが南方先生ですね。そう言えば家茂公、南方先生と助手の人にお礼をしたいです」
「もちろんです。二人は和宮の命の恩人。そして真犯人を突き止めた小松殿と凪さんにも」
「いえいえ。私はたいしたことをしていませんし、私と妻だけではなく龍馬やマリアくんにも協力して貰いました」

話したことはなくてもよく知ってますなど言えなくて南方先生の話題に変えると、上手く切り替わり前回の事件のことになり帯刀さんと私まで感謝されてしまう。
帯刀さんの言う通り、龍馬とマリアちゃんとチナミちゃんがいたからこそ解決が出来た。
さすがにチナミちゃんのことは言えないからあえて伏せたのだろう。
一番役に立ってないのは私だ。

「でしたらその方達にもお礼をしなければいけませんね。今度江戸城に招待して、こういう風な席を設けましょう」
「それは良い考えですね。いつにしましょうか?」

楽しそうに二人は計画を立て始めすっかり二人の世界に入っていた。
そんな仲つづましい姿は可愛らしく、良く考えなくても私達の世界にすればまだ高校生。
青春真っ只中の年頃だ。

「すっかりおしどり夫婦みたいだね。では僕はこの辺で失礼します。また誘って下さい」
「え、あはい。今日はありがとうございました」

独り身のリンドウには居心地悪かったようでそう席を立ち、宮ちゃんの言葉が終わるとサッと帰ってしまった。

「夕凪、どうしたの?私に甘えたい?良いよ甘えても」
「別にそんなことはないです。宮ちゃんと家茂公の前ですよ」
「手本を見せるのもありでしょう?」
「ないです」

さっきまであんなに堅くなっていた帯刀さんが何を思ったのか突然色目使いを使い、私は声を裏返し堅く拒否を続ける。
宮ちゃんと家茂公は他人事だと思って、微笑むだけ。

結局対立の真相は闇の中になりそうだけれど、知りたいとは思わない。
楽しかったのだから、それで良いと今は思う。



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