夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「帯刀さん、ただいま」
「夕凪おかえり。今回は偉く早かったね。最短記録だよ」

空から落ちるにも関わらず私は笑顔で挨拶を交わせば、帯刀さんも笑顔でそう言い私をギュッと受け止め地面に降ろしてくれた。
なんだかやけにあっさりしていて、言葉が引っかかる。

・・・最短記録?

「どのぐらいぶりですか?」
「三日ぶり」
「!!」

ふとした疑問の答えは確かに早い物だった。
今までのことからして冗談にも取れる内容だったけれど、こう言う冗談は直感で分かるから嘘ではない。

三日。
だから帯刀さんはケロッとしている。
私も三日ぐらいなら、我慢が出来るはず。

「夕凪は違うの?」
「私は一ヶ月ぶりです」
「そう。だったら今日は私を一人いじめしなさい。なんでも言うことを聞いてあげるから」
「ならとびっきりの口づけをして下さい」
「・・・いいよ」

私の事情を知った途端甘やかす帯刀さんに、私はキスをせがみ目をつぶり時を待つ。
久しぶりのキスの味は、特別に甘いって私は知っている。
しかし

「もしもしお二人さん。私達がいるのを忘れないで下さい。だいたい白昼堂々と何をしようと言うのですか?」
「・・・・・・」
「え、・・・アーネストに南方先生まで?」

アーネストの冷えきった声に寒気を感じ辺りを見回せば、アーネスト以外にも気まずそうな南方先生までいた。
しかもここは我が家の庭先ではない。
笑顔がひきつる。

こんな似たような展開、前にもあったような?

「凪さん、こんにちは。あなたはいつもこんな登場をするのですね?いかにもあなたらしい」
「そう、いつも私の元に落ちてくる。私と夕凪は運命の赤い糸で結ばれてる何よりの証だからね」
「赤い糸。小松さんにしては随分メルヘンチックな考えですね」
「妻の影響でね」

二人の間に見えない花火が飛び交い、いつもながらの恐怖を感じる。

だけどどうしていつも私のことで、嫌みの言い合いになるんだろうか?
しかもなぜか帯刀さんが、挑発してるような。


「帯刀さん、私帯刀さんにとっても重大な話があるんです」
「重大な話?」

だから私なりに辞めさせようと無理矢理話に加わり、そう言って耳元に口を近づける。

早くこの事実を知って欲しい。

「私達、親になるんですよ。頑張りましょうね?」
「それはつまり夕凪は、私の子を身籠ったこと?」
「はい」
「おめでとう夕凪。南方先生、サトウくん、妻が懐妊したそうだ」

聞いた瞬間戸惑う帯刀さんだったけれどすぐに理解してくれ。今まで見たことのないなんとも言えない笑顔を浮かべ二人にもこのことを伝える。
やっぱり帯刀さんも嬉しいんだ。
まったく不安がなかったとはいえ、この反応を見てホッと一安心。

「それはおめでとうございます。今何ヵ月なんですか?」
「ありがとうございます。もうすぐ4ヶ月になります」
「そうですか。生まれてくるのが、待ち遠しいですね」
「はい。あれアーネスト、顔色が悪いようだけど、どうかした?」

何も言ってこないアーネストに気づき話を振ってみると、顔色が微かに青ざめ今さっきと違って元気がない。
帯刀さんと同じように祝福してくれる南方先生とは裏腹に、どうしてアーネストはそんな反応をするのだろうか?



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