夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「瞬から祟の事情を聞いたんだな」
「ああ。だからあいつ必死なんだな。それなのに瞬の奴は兄貴の癖に冷た過ぎるよ」
「あいつは白龍の神子命だからな。マリアに散々きついこと言われて、ショックしまくってるよ」

愛宕神社に着いた俺達は早速本題に入るのだが、初っぱなから瞬の株が落ちる内容だった。
元々都は瞬の事を良く思ってないらしいから、これで更に追い打ちをかけた。

まぁ祟の暴走の原因は兄貴の放置もあるのだから、そうなっても自業自得で仕方がない。
もっと親身に考えて可能性を探せばよかったんだ。
合わせ世にしなくても、生きていく可能性はあるのだから。
しかし都が冷静な受け止め方が意外だった。
瞬と同じだと思っていたが、都の方が案外常識人らしい。

「だけどゆきは今必死なって、祟を助ける方法を探してる。だからお前は祟に」
「無駄だよ。例え今回それで世界が救われたとしてもその後一年もしないうちに、あっちの世界はある組織によって再び滅びの危機に直面する」
「は、なんだよそれ?」

前向きな考えを真っ向から否定し祟にしか言ったことがないこれから起きるだろう真実を伝えれば、都は目をまんまるくさせ驚き大胆にも俺に密着し胸ぐらをつかみ問う。
それぐらい衝撃なのはよくわかる。

「俺とマリアがあっちの世界に辿り着いたのは、約十年前の鎌倉だった。それからしばらくは母上の叔父と叔母に育てられ、それなりに幸せで平凡な毎日を送っていた。それがある日昔母上が属していた組織に捕まり」
「おい、何言ってんだ?」
「黙って聞け。神の力を宿してるマリアは研究材料として、完全に外の世界とは隔離させられた。俺は研究者と殺し屋をやりながら、表の世界との繋がりを持ち続けていた」

突拍子もないことに混乱しまくる都に構わず、俺は地獄でしかない過去を話続ける。

幼いマリアが白龍の逆鱗で遊んでいた時、俺達は時空に飲み込まれた。
幸い母上の叔父と叔母は優しい人達で白龍が迎えにくるまで家に置いてもらうことになったが、白龍はいつまで経っても迎えには来なかった。
絶望したね。
そして俺は白龍を憎み、マリアとそこで生きてくことに決めた。
それなのに数年がたち俺とマリアは組織に拉致され、マリアの能力を知ったあいつらは・・・・。
最初の頃はマリアを守るため歯向かった俺だったが勝てない相手と知りあえて従い、信頼されるよう惜しみない努力をした。
すべてはマリアを救い出すため。
そのチャンスを手に入れたのが、半年前。
マリアを兵器として使う前に一年の自由が許され、俺を監視役にしてマリアは学校に通い普通の生活を送ることになった。
そして俺は祟を見つけ出し、半年後計画を実行に移した。
合わせ世になれば、必然的に組織も消滅する。

「そんなの信じられるはずないだろう?」
「信じられないのなら、信じなくていい。だがこれは紛れもない真実だ」

やっぱりすぐには信じてもらえず、でも信じようとする努力は見られる。
いくらここに来てありえないことを体験したとしても、あくまでも異世界でのどこか別の話。
まさか自分達の世界で裏の世界があるなど、今まで夢にも思っていなかっただろう。
それが普通の反応で、俺も強制するつもりはない。



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