夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「渓さん、話がある」
「待ってたよ。都。ここじゃあれだから、場所を移動しようか?」
「そうだな」

瞬と都におおよそのことを話した数日が経過した頃、ようやく都は瞬から詳しい話を聞いたのか俺を訪ねてきた。
ちょうど用事があったので俺一人で出掛けようとした矢先に出会い、そう言って俺は行き先を変更して出掛けることにした。

俺の用事は大したことじないので、後回しにすればいいだけ。
それにしても前も思ったが、さすが都。
どこの世界にいようとも、同性からやたらにモテそうな美青年姿。
中身がいいのに勿体ない。
と言うことは、まずはそこからだな。










「ほぉ、これは想像以上だな」
「一体これはなんの真似だ?殺されたいのか?」
「まあまあ、たまにはそういう格好も良いだろう?」

真底嫌がる都に無理やり着物を着付け似合う化粧を終えると、やはりご機嫌ななめな都は怒りに満ちたドスの掛かった声で俺に問う。
反応は俺の予想通りで、これがまた面白い。
それにしても今の都は、どっから見ても美しい姫君だった。

俺が知る女とは全く異なる都は、現在一番の俺のお気に入り。
一見頼りになりサバサバとした王子様的存在だが、本当の彼女はそうではない。
わざと強がっているだけで、本当は人一倍傷付きやすいかよわき女性。
ライオンのふりした仔猫。

「よくないね。だいたい私がこんなの着たって、似合わねぇだろう?」
「似合ってるよ」
「え?」
「お前は素材がいいから、やり方次第ではなんでも似合うんだ。・・・綺麗だよ都」
「な何言ってんだよ!お前の目は腐ってるのか?そんなわけ・・・」

あんなに威勢よく吠えていた都が魔法の言葉一つでおとなしくなり止めの口説き文句を耳元で甘くささやくと、耳から真っ赤に染まり声を裏がえったと思えばかの泣くような声で否定する。

所詮都も女性。
俺が本気で口説けば、すぐに落ちるだろう。
でも俺は都を本気で口説かない。
本気の恋など俺には必要がないんだ。

「あるよ。さぁ、お姫様、俺と密会でもしませんか?知りたいんだろう?俺達がどうして祟と手を組んで、合わせ世にしようとしてるのか。都にならすべてを教えてやってもいいぜ?」
「本当だな?」
「ああ。ただし誰にも話さないと言う約束でな」
「・・・分かった。私の天使のことだから、付き合ってやるよ」

あくまでも軽く都を誘い甘い餌を散らかせれば、案の定都は迷いもせずそう言って食らい付く。

白龍の神子のため。
これは最早都の口癖で、都のすべては白龍の神子にあると言っても過言ではないだろう。
少々焼けるが俺も俺のすべてはマリアにあるのだから、案外お互い様なのかも知れない。
俺と都は似た者同士。

「そうこないとな。そんじゃ俺は馬を用意してくるから、少し待ってな」
「馬?お前、乗れるのか?」
「当たり前だろ?俺は鎌倉時代前の生まれで、十一歳まで自然豊かな熊野と言う地で育った。乗馬が出来て当たり前だからね」
「そういやそんなこと言ってたな?そのことも詳しく教えてくれんだろうな?」
「そう言うこと」

と俺は明るく言い残し、馬を手配しに向かう。



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