夢幻なる絆
□12.護りたい者のため
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「そう。特に今の白龍には力がないだけじゃなく神子を力をくれるただの道具しか思っていない。堕ちるところまで墜ちた愚かな神」
「そんな酷いこと言わないで下さい。白龍はそんなこと思っていません」
「そうです。藤原、それはいくらなんでも言い過ぎです」
「酷い?俺は真実しか言ってないけれどね。こんな酷い奴らを仲間にしたくないだろう?」
私と同じことをズバッと渓は言い捨てると、ゆきはムッとしてあの時同様全否定する。
チナミちゃんもこれにはゆきをかばうように意見するけれど、渓は可笑しそうに笑いながらマリアちゃんを連れ我が家に戻っていく。
いくら真実とは言え、あなた確実に悪役ですよ。
だけど渓はなんでそこまで知っているのだろうか?
少し内部事情を知りすぎてるような。
「凪様、渓さんどうしたのでしょう?」
「マリアちゃんを護るのに、必死なんだよ。ほら一度マリアちゃん怨霊に大怪我を負わされてるし」
「あ、そうでしたね。でしたら渓さんらしいです」
そんな渓に咲ちゃんも恐怖を感じたらしく問われるけれど、当たり障りのない答えにすぐ納得してくれ笑顔を浮かべる。
渓さんらしい。
確かにそうだね。
マリアちゃんにとって、渓は優しくて自慢のお兄さん。
「ゆき、あいつの言葉なんか、気にすることないんだからね」
「そうです。そしてあの兄妹とは、もう二度と関わってはいけません」
「・・・・。でも私はやっぱりマリアに手伝って欲しいの。ねぇリンドウ。白龍の神子は二人いても良いいんでしょ?」
きつく止める都と瞬の言葉をまったく聞く耳を持たずあれだけのことを言われても、まだゆきは諦めようとせず前向きに考えている。
一体全体この子の頭の中は、どうなっているのだろうか?
諦める言葉を知らない以前、単なる世間知らずって言う問題かも知れない。
「二人の母親の時はそうだったらしい。だけど白龍はけして彼女を神子には選ばないだろうね。・・・白龍がもっとも愛した神子の娘で、自分のせいで不幸にさせたから・・・」
「・・・咲ちゃん、行こうか?」
「そうですね」
これ以上聞いていると可愛そうだと判断した私は咲ちゃんにそう言い手を繋ぎ、彼女達から離れることにした。
いくらなんでもそれ以上のことはリンドウでも言わないと思うんだけれど、普通ならこの言葉で大体の予想が付く。
渓の言う通りだって事に、間違えなく気づくはず。
そしたらゆきは傷付いて、一人で悩むだろうね。
都って言う親友がいるのに、相談することなく。
「そう言えば誰もシロちゃんとシュウちゃんのことを怪しまなかったね」
しばらく経ってから、フッとそんなことに気づく。
怪しまれなかったというか、気にも止められなかった。
それは結果的に良かったとは思うんだけれど、なんかそう言うのも結構不気味である。
後から一発ドカンとかならなければ良いんだけど・・・。
−それは我らが気配を最大限に消していたからだよ。
−それに白龍の神子はマリアのことで頭がいっぱいのようだったので、よほどのことがない限り気づかれなかったでしょう。
「そう言うことか。なら安心した」
「良かったですね。凪様。ですがあのゆきさんとか言う神子様は、マリアさんを説得するのでしょうか?」
「どうだろうね?みんなが反対するだろうから、しないんじゃないの?」
納得いった訳を知り私はホッとすると今度は、咲ちゃんがゆきとマリアちゃんのことを心配する。
咲ちゃんは私と違ってゆきの印象は良くも悪くもないけれど、マリアちゃんの方が心配なのは確か。
私はさっきのことを踏まえそうは答えた物の、実は懲りずに来るのかも知れないと思っていたり。
だってこれからはゆきは消えかかっていくのだから、マリアちゃんの協力が今以上に必要だと当然考えると思う。
それは良く分かるんだけれど、私はゆきの味方は出来ない。
こればっかりはマリアちゃんの意見を尊重する。
これからのためにも帯刀さんにこのことを話して、渓に詳しい事情を聞くしかないか。
私達の未来のために・・・。