夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
24ページ/48ページ


「凪さん、咲さん、大丈夫ですか?」
「二人とも、もう大丈夫」
「渓にマリアちゃん?」

今度は突然の渓とマリアちゃんの登場に、私は目が点になった。
良く考えれば二人にも怨霊退治できる能力はあって当たり前だけれど、すぐには結び付かず余計混乱するだけ。
さらに驚くべき光景は続く。

「マリア」
「うん、めぐれ、天の声 響け、地の声 彼のものを封ぜよ」
「え、怨霊がすべて消え去った?その呪文って・・・」

聞き覚えと言うか読み覚えのある呪文をマリアちゃんが唱えると、一瞬で怨霊はすべて浄化され嫌な気配もなくなり平穏が戻る。

これが白龍の神子の力?



「さすが白龍の神子の娘だね?力はお墨付きだ」
「・・・リンドウ?」
「咲さん、凪さん、お怪我はないですか?」

マリアちゃんの力に圧倒されていると仁友堂の方からリンドウのそんな声がして、視線を合わせるとリンドウ以外に南方先生とチナミちゃんそれからゆき達がいた。
南方先生を八葉として協力を求めに来ていたんだろう。

「龍神の神子の娘って、あの子が?」
「そう。神子殿と同じ浄化の能力を持っている。だけど白龍の神子ではないよ」

星の一族であるリンドウだから、当然マリアと渓を知っているらしい。
驚くゆきに坦々と教えている。

「私は蓮水ゆき。あなた名前は?」
「・・・私は藤原マリア」
「え・・・。ねぇマリア、私に力を貸して欲しいの。今世界が滅びかけ」
「すまない。妹を巻き込まないで欲しい」

教えてもらったゆきは少しの動揺を見せた後マリアちゃんの元にやって来てさっそく協力をお願いするのだけれど、隣にいた渓が割り込み鋭い視線でゆきを睨むように怪訝しく拒否する。
その迫力にゆきはビクッ怯え数歩後退。

マリアちゃんを危険な目に遭わせたくないと言う理由だって知っている私でさえも、今の渓はとにかく恐ろしい。
これがシスコン兄ちゃんか。
だけどあの一瞬のゆきの動揺はなんなんだろう?
ゆきもマリアを知っているとか?
でもマリアはゆきを知らないみたいだし。

「どうしてですか?世界が滅びかけているんですよ。その証拠に怨霊が多発しています」
「怨霊など前からいる。大体世界の危機を救うのは、白龍の神子と八葉の役目であって、マリアは一切関係がないこと。そうでしょ?リンドウさん」
「そうだね。神子殿、一般人を巻き込んでどうするの?帯刀くんのことにしても、もっと神子としての自覚を持った行動をした方ががいいよ」

ごもっとで何も反論できない渓の意見と、どこか冷たいリンドウのきつい言葉。
ここで普通なら都と瞬がゆきの見方を思想なんだけれど、意外にも何も言わないどころか視線をわざと背けている。

なぜ?

「だけど、マリアに力があるんです」
「だから何?力があっても白龍はマリアを選ばず君を選んだ。その意味分かる?」
「意味?」
「ゆき、行きましょ?彼の話など聞いてはいけません」
「そうだよ。そいつらはそいつらなり事情があるんだから、いくら話し合っても時間の無駄なだけ」

それでも食い下がらないゆきに、渓はあざ笑い意味深な発言と問う。
ここでようやく都と瞬が口を挟むが、どっちかと言うと渓の肩を持つ言い方。
まぁ確かにゆきの肩を持つ見方もあるけれど、そう言う見方はしていないと思う。

昨日のことにしても、渓と二人は面識があるとか?
そして渓も二人とは面識がある・・・。

「私は意味が知りたい。そうじゃなかったら納得なんでできない」
「マリアをこれ以上、不幸にさせたくなかっただけ。二人の白龍の神子を選べば負担は少なくなるが、白龍はマリアを神子にしたくない理由がある」
「・・・白龍の神子は不幸なんすか?」

やめればいいのに訳を聞き顔色を真っ青にさせるが、マゾっ毛があるのだろうかさらに問う。
そんなこと聞かない方が身のためだと思うんだけれど、それでも聞くのは信じたくないから確認したいだけ?
やっぱりゆきは、可愛そうな子だと思う。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ