夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「奥様、マリアさん、渓さん、お帰りなさい」
「ミャ〜」
「え、猫ちゃん?梅さん、ただいま」

まだ少し気が重いだけど明るく偽ったままマリアちゃんと渓とで我が家に帰ると、梅さんとそれから京にいるはずの猫ちゃんに出迎えられる。
目を疑って空いてる手で目を擦り確認するものの、あっちの世界で買った赤い鈴の首輪を付けていた。
それに飼い主である私が猫ちゃんを、見間違えるはずかない。
猫ちゃんは嬉しそうに甘声を出し、私の足下にすり寄ってくる。

「この猫がさっき凪が話していたの猫ちゃん?」
「そうなんだけれど、なんでここにいるんだろう?」
「それは我が猫を連れてきたからだよ」
「え、シロちゃんが?」

猫ちゃんがどうしてもここにいることが分からないでいると、シロちゃんとやって来てあっさり真相を話してくれた。

言われて納得。
きっと猫ちゃんが寂しがっているのに気づいたから、シロちゃんはわざわざ京まで迎えにいったんだね。
シロちゃんと猫ちゃんは仲良しだったし、シロちゃんはとっても優しいからね。

「さよう。それでその猫は?」
「この子は平田さん。今日から我が家の一員だよ」
「これは真っ白な可愛い仔猫ですね?」

と梅シロちゃんに聞かれ平田さんを紹介すると、梅さんには受けが良く歓迎してくれる。
なのに平田さんは元気がなくなり、私の胸元で怯えている。
ひょっとしたらシロちゃんと猫ちゃんに、またいじめられるとでも思っているのかも?
いくら猫と言えども、こんな可愛い仔猫をいじめるなんて許せない。
大人げないけれど、後できついお仕置きをする?

「猫ちゃんも仲良くしてね。平田さん、大丈夫だよ」
「ニャ〜ン」

猫ちゃんにそう言い機嫌が良さそうに返事をしてくれたので、試しに平田さんを猫ちゃんに近付けて見る。
すると猫ちゃんは平田さんを舐め始め歓迎してくれ、脅えていた平田さんは心を開き嬉しそうだった。

「ミャ〜ン」

あっと言う間に二匹は打ち解け、じゃれあい始め一件落着。
これで正式に平田さんは、小松家の飼い猫となった。
やっぱり猫ちゃんも優しいね。

「わんわん」
「コロも遊びたいって」
「なら仲間にいれてもらいなよ。猫ちゃん平田さん、良いでしょう?」
『ニャーン』
「わんわん」

そこへコロも加わり三匹は楽しそうに仲良く遊び、見ているだけであんなに重かった心が軽くなった気がする。
どこをとっても無茶苦茶可愛い。
出来ることなら写真とビデオに残しておきたい。

「奥様は本当に可愛いものが好きなのですね?」
「凪、幸せ?」
「え、あうん」

最早変態でしかない私なのに梅さんとマリアちゃんに暖かな眼差しで見つめられ、我に戻った私は恥ずかしく思いながらよだれを拭く。

私はまた可愛い物を見て、暴走しかけてしまった。
暖かい優しい二人の私を見る眼差しが、なぜか痛い視線に変わっていくのはきのせいだろうか?



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