夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
20ページ/48ページ


「すみません。おしるこ二つにいも羊羹を下さい。俺達は外の席にいますので、よろしくお願いします」
「あ、渓?」
「外は寒いので、遠慮なく中へお入り下さい」
「犬も一緒なので、そう言うわけにもいかないんです。凪さんと帯刀さんも来てたんですね」

宿の荷物を取りに行っていた渓がやって来て、おばさんに注文しそう言われるが訳を話私達に視線を向ける。

コロがいるのだから仕方がないか。
いくらお利口さんでも、コロは紛れもない犬だからな。

「うん、ここは馴染みの店で、江戸で一番の甘味屋なんだよ」
「凪様、ありがとうございます。お知り合いの方なのですね?」
「うん。我が家に住むことになった知人なの」
「でしたら入り口付近の席でしたら、構わないですよ。小松様と凪様には、いつもご贔屓にさせてもらっていますから」
「本当ですか?ありがとうございます」
「悪いね 。女将」

おばちゃんの気前の良い計らいでそう言うことになり渓は嬉しそうに一度外へ出て、マリアちゃんに事情を話てからコロも連れ再び中へ入って来る。

おばちゃんが優しい人でよかった。


「お店の人ありがとう」
「ワンワン」

ちゃんとマリアちゃんとコロもおばちゃんにちゃんとお礼を言って 私達の隣の席に座る。
その姿はやっぱり可愛いくて心癒されてる中、マリアちゃんと視線が交わったと思えば平田さんを見て首をかしげた。

「マリアちゃん、この子の名前は平田さん。今日から我が家で飼うことになったからよろしくね」
「うん、わかった」
「平田さん・・・随分と変」
「私が命名したのだけれども、何か不満でもある?」
「いいえ、ありません。可愛い仔猫ですね?」

やっぱりと言うかなんと言うか平田さんと言う名前を突っ込まれそうになったが、帯刀さんの殺気と言う圧力に負けた渓は無理矢理言い換え平田さんの頭をなぜる。

笑顔が完全にひきつってます。
ひょっとして平田さんって、それなりの理由があるとか?
あとで聞いてみよう。

「うん。小さくて白くて可愛い」
「ニャ〜ン」
「抱いてもいい?」
「いいよ。はい、どうぞ」

名前などには拘らないマリアちゃんはすっかり平田さんを気に入って、平田さんもマリアちゃんに気に入ったようで抱かれても嫌がらず尻尾をふる。
隣におかれたコロはなんとなく複雑な表情でマリアちゃんを見上げていたため、私は代わりにコロを抱き上げ頭をなぜた。

コロだって小さくてコロコロしている可愛い仔犬。
ムクムクして仔犬独特の匂いがする。
やっぱり犬も・・・

「夕凪、いくらねだっても犬は飼わないよ。猫二匹に四神がいれば、十分過ぎるでしょ?」
「なんのことですか?」

当たり前のように私の心を読み取り冷たい視線でばっさり切り捨てられ、惚けてみたけれども無駄な抵抗。
その証拠に、冷たい視線がますます厳しくなっていく。
四神達はペットじゃないとも否定出来る雰囲気じゃない。

しょうがないからあっちの我が家で・・・あっ。
あっちの我が家に二度と戻りたくないと思っているのに、なんでそんなこと思ってしまったんだろう?
帯刀さんのいない世界で犬が飼えたとしても、そんなの欲しくない。

「どうしてそんな悲しい顔をするの?そんなに欲しいのなら、何匹でも飼っていいよ」
「そうじゃないんです。犬はいりません」
「そう?なら私はもう藩邸に行くけれど、本当に大丈夫?」
「もちろんです。私はマリアちゃんと渓と一緒に帰るので、心配しないで下さい」
「分かった。渓、妻のことを宜しく頼みます」
「分かりました」

すぐに私の異変に気づき正反対のことを言われても私は首を横に強く振りハッキリと否定し、それでも少し心配する帯刀さんを安心させるべく強がって笑顔を浮かべそう言ってみせた。
そうでもしないと帯刀さんは藩邸には行かずに、ずっと私の傍にいてくれる。
そしたら薩摩藩の人達に迷惑を掛けてしまうから、今は我慢して夜いつも以上に甘えればいいだけのこと。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ