夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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私が元の世界に戻ってきてしまい酷いもので一ヶ月が過ぎようとしていた。

梅さんの予想通りめでたく妊娠していてもうすぐ四ヶ月で、あんなに苦しかったつわりは軽くなって来ている。
なんか私結構つわりが酷い体質だったらしい。
精神状態だっていつも以上に最悪で、食事は毎日取っているけれど、度々眠れない日々が続いている。

帯刀さんは大丈夫だろうか?
私で一ヶ月だから、帯刀さんは最悪半年?
つまり事件は、もうすべて終わっている?
ゲーム通り全員ハッピーエンドでなら、何も問題がないんだけれどね。

「ねぇ雪ちゃん、マリアちゃんと渓の目的はなんだろうね?合わせ世にしないといけない理由でもあるのかな?」
「そうですね?本来なら合わせ世では合わせ世の住人じゃないと生きられないはずですけれど、その二人は二つの世界の間の子。何か秘密があるかも知れません」

弟夫婦の家に遊びに行き雪ちゃんと仲良く夕飯の支度をしてる最中、どうしても腑に落ちないマリアちゃんと渓の話題を切り出してみれば雪ちゃんなりの推理を話してくれる。

二人の素性を雪ちゃんに事細かく話すと、両親についていろいろ教えてくれた。
実際ゲームもやってみて渓は父親のヒノエと外見も内面もそっくりだったけれど、なぜかマリアちゃんは母親の望美に似ていないし、四神達に聞いた白龍の神子とはまったく異なっている。
ひょっとしてゲームではない出来事が、その時も起きたのかも知れないと私達は考えている。
だけど二人の母親は間違えなく白龍の神子なんだよね?
・・・望美じゃなかったとか?

「大筋はゲーム通りでも実際は微妙に違ってきてることか。所謂夢設定だね?」
「そうかも知れませんね。それにしても今更ですけれど、小松さんってお義兄さんなんですよね?」
「うん、そうだね」

いきなり話題はガラリと変わり本当に今さらの事を問われ頷くと、雪ちゃんの目は輝き異常なまでに興奮し始める。

好きなキャラがお義兄さん。
確かに私も興奮しそうな展開。

「ならこれからはお義兄さんって呼んじゃおう。お義兄さんは私の存在を知ってるんですか?」
「もちろんだよ。結婚祝いにプレゼントした薩摩切子の晩酌セットは帯刀さんと二人で選んだんだよ」
「え〜本当ですか?確かにあの時薩摩切子でテイションがあがりまくでしたけれど、そんな隠し要素があったなんて。我が家の家宝にします」

今明かした真実にますます興奮する雪ちゃんは、大袈裟すぎることを言って喜んでくれる。
そんな雪ちゃんを見ているだけで、なんだか心が癒され優しい気持ちになっていく。

やっぱ雪ちゃんは可愛いな。
最近お腹も段々膨らんできて、誰が見たって幸せそうな妊婦さんだ。

「そう言えば、出産予定日っていつだっけぇ?」
「再来月の15日です」
「元気な子が産まれるといいね」
「はい。この子が産まれてくるのは、お義姉さんのおかげです。お義姉さんが厳しく言ってくれたから、純ちゃんは決心してくれたんです。私すごく嬉しくて、この人とならやっていけるって思ったんです」
「そうだったね」

面と向かって雪ちゃんに感謝され少々恥ずかしくなる私。

でも雪ちゃんが満足そうで、今では望まれてる新しい命だから私も嬉しい。
もうずいぶん前に思えるけれど、よく考えればそんなに月日は経ってない。
そう考えると私と帯刀さんが出逢ってから、この世界では一年も経ってないんだ。
本当にいつになったら向こうに永住出来るんだろうか?

「お義姉さんも元気な子が生まれるといいですね」
「うん。早く帯刀さんにこの子の存在を知らせたい。きっとすごく喜んでくれると思う」

お腹を触りながら、私は言った。
こう言う風にしてると、なんだか優しい気持ちになっていく。

この子もみんなから望まれてる大切な命。
今はまだ当たり前だけれど、雪ちゃんと弟にしか喜んでもらえてない。
だけど向こうにいけば帯刀さん以外にも、みんなが喜んでくれる。

「ですね。きっともうすぐですよ」
「だといいんだけれどね。・・・あっ?」

いつも通り結局雪ちゃんに励まされ相づちを打つと、久々に四神のブレスレットが輝き始め強くなっていく。

一ヶ月ぶり・・・。



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