夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「帯刀さん、私はこのお菓子が良いと思います。美味しいだけではなく、見た目も可愛いですから」
「そう?ならこれにしよう。女将、これを30組明日の昼までに用意出来る?」
「はい、お安いご用です」

お祝いのお返しを選ぶため甘味屋であらかた食べた結果、私の選んだ物で無事に決まりそう言うことになった。

可愛い白兎とみかんの形をしたおまんじゅう。
そして見た目に劣らないほどの、上品な甘さでほっぺたが落ちるほど美味しい。
これならきっとみんな喜んでくれると思う。
さすが江戸で一番美味しい評判の甘味屋さん。

「みゃぁ〜ん」
「え、仔猫?」
「すみません、外に出てしまったようですね。すぐに中へ連れて行きます」
「大丈夫ですよ。私猫が大好きだし、この子凄く可愛いじゃないですか?」

いきなり真っ白い仔猫がやって来ておばさんが困ったようにそう言うけれど、私は首を横に振り仔猫を抱き上げそう言った。
仔猫は人なつっこいらしく私の顔をペロペロと舐め、京にいる猫ちゃんとの出会いを思い出した。
猫ちゃんも人なっこくて可愛くて・・・元気にしているんだろうか?

「そうですか?この仔猫は親猫とはぐれたらしく最近家に住み着いたのですが、前から飼っている猫と仲が悪くてね。可愛そうだけれど情がわく前に、よそへ出そうと思っているんです」
「そうなんですか?・・・帯刀さん、この子うちで飼って良いですか?」
「夕凪、いきなり何を言いだすの?我が家にはもう・・・」
「駄目ですか?ちゃんと私が面倒をみますから、いいですよね?帯刀さん」

仔猫の生い立ちが可愛そう過ぎて思わず帯刀さんにおねだりすると、帯刀さんは驚きの戸惑いを見せるからここは最終扇を使って見る。
愛らしく帯刀さんの目を見ながら甘えるようにおねだり。

仔猫は私に懐いていて、我が家ならいじめる輩はどこにもいない。
京に戻っても猫ちゃんなら、きっと仲良くできるはず。

「・・・夕凪はずるいよ。そんな顔でお願いされたら、駄目だとは言えなくなる」
「ありがとうございます。帯刀さん大好き」

予想は的中。
真っ赤に顔を染めた帯刀さんから許可がおり、私は嬉しくてお礼を言って抱きつく。
帯刀さんは私のお願いをすべて聞いてくれる。
それは甘やかされているだけで良くないだろうけれど、今回は仔猫のためでもあるからね。
それに帯刀さんだって、猫が好きだから。

「本当に小松様は奥様を愛していらっしゃるんですね。この子も幸せだと思います」
「え、あ、うん」

おばちゃんが微笑みながらそう言うと、すでにキャパオーバーの帯刀さんは子供みたいにただ相打ちをするだけだった。
そんな帯刀さんのことが可愛いくて、さらに愛しくなっていく。

「帯刀さん、なんて名前が良いですかね?」
「名前?だったら・・・平田殿って言うのはどう?」
「え?・・・相変わらずセンス0の名前。しかも今回は名字って・・・」
「何か異論でもある?」
「いいえ、ありません。あなたの名前は・・・平田さんね」
「みゃぁ〜」

帯刀さんの可愛らしさ心奪われつい聞いていけないことを聞いてしまい、案の定ろくな答えが返って来ない。
しかも反対は受け付けないとごろか反論しよう物なら、後でお仕置きを喰らいそうな勢いがある。
一瞬にしていつもの帯刀さんに戻ってしまい、仔猫の名前は問答無用で平田さんになってしまった。
仔猫には分からないらしくご機嫌のまま。

それにしてもなぜ・・・平田さん?



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