夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「なんでお前達がここにいる?」
「ウゥ〜、ワンワン」

今まで利用していた宿から荷物を小松邸に持って帰る途中、すごい殺気を漂わせた瞬に呼び止められた
すぐに危険を感じたコロは激しく吠え、マリアは俺の背後に隠れる。
瞬の隣には都も同じ顔で俺達を睨んでいるが、白龍の神子はどこにも見あたらない。
昨日の様子からして、まだ教えてはないようだ。

「そんなの俺達は本来ここの住人だからに決まっているだろう?」
「何?ならどうして俺達の世界にいた?」
「お前に教える義理はないね」

余裕を噛まして言っては見たが、本当はあんな残酷な過去など思い出したくはない。

「まさかお前達が祟をそそのかしたのか?」
「弟を見捨てた奴がよく言うぜ?俺と祟の思想が同じだから、協力しているだけだよ」

冷静じゃない瞬に俺は冷静に話し合うが、瞬にしてみれば余計気にくわないのかも知れない。
こう言うときだけ兄貴ずら。

「思想?一体お前は何を考えてる?」
「もちろん、マリアの幸せ。だから俺は合わせ世と言う理想郷を作る」
「合わせ世が理想郷だと?あそこはそんな場所じゃ」
「それはお前が知っている未来であって、俺がこれからするんだよ。題してノアの箱船計画」
「何言ってるんだ?大体合わせ世になったら、渓さん達も滅びるんだろう?」

ようやくここで都が信じられないと言う様子で、俺達の会話に口を挟む。

何も知らないやつらが考えること。
教えてやらないとフェアじゃない。

「残念。俺達は二つの世界の血が流れた人間。合わせ世でも生きられる」
「二つの世界の血?」
「ああ、俺達の母上は白龍の神子で、父上は母上達の八葉だった。もっとも源平時代の頃のだけどな」

ここまで言えば十分だと思う所まで答えても、瞬は納得いかないようで俺達を睨んだまま。
都はあっけにとられ、言葉を失っていた。

「だとしたらお前達が、ここにいるのはおかしいだろう?」
「それは彼女が本来ならもう一人の白龍の神子だったからだよ。神子殿といいや比べようもない強力な力を秘めている」
「リンドウ?」
「それは本当か?」
「そうだよ。だけど白龍は罪悪感からか、彼女を選ばず神子殿だけを選んだ」
「リンドウさん、ご説明ありがとうございます」

大まかな理由を知っているリンドウさんが俺達の元にやって来て、どうやっても信じてくれない瞬にもう少し詳しい事情を話してくれた。

これでようやく納得したらしい。
それにしても白龍の神子より力があると言ったら、いくら真実だと言え可愛そうだ。
リンドウさんは星の一族のなのにどこか覚めているとこがあるため、俺達のことを知っていてもある程度は泳がせてくれている。

「だったらどうして祟の味方になるんだ?あいつは悪いことをしようとしているんだぞ?」
「悪い?なら祟に死ねと都は言うのか?祟はただ生きたいと願っているだけ」

そう都が言うが、それは自分勝手の理解である。

人は自分と違う考えを持つ者を悪と言う。
確かに俺と祟は多くの人を消すと言う意味では悪だ。
でも未来は合わせ世となっている以上、ならない未来にしようとしている神子達もある意味悪とも言える。
合わせ世の住人を産まれさせないんだからな。
それにあちらの世界は例え救ったとしても、近い未来滅んでしまう運命。
白龍の神子達もあちらの世界では、なにも力がない若者に過ぎない。



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