夢幻なる絆
□12.護りたい者のため
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どうせこんなことになるんじゃないかと思っていました。
祝賀会は結局男どもは酔い潰れてしまい、ある意味期待通り終了となった。
マリアちゃんは疲れていたのか、ペンギンのぬいぐるみを抱きしめ部屋の片隅でおねむ。
その姿がやたらに可愛らしく、目に毒である。
「凪様、いかがいたしましょうか?」
「え、あ帯刀さんはもう少ししたら起こして、部屋につれていくよ。前回のようになったら困るしね。咲ちゃんも泊まっていく?」
理由はどうあれ、女性だけの寝床に侵入してくるのはまずい。
それに私は帯刀さんと約束した。
「いいえ、私は帰ります」
「そう?なら門まで送るね」
二回目と言うこともあり咲ちゃんもさっぱりしていて、そう言い帰る仕度を始めた。
いくら深夜で物騒な世の中であっても、危険はないと思う。
「凪様、本当に良かったですね?これで帯刀様との絆がよりいっそう深まるのではないのでしょうか?」
「うん、私もそう思う。だからこの子が生まれるまでに、私の変な体質を何とかしたい。行ったり来たりなんて、子供にとってよくないだろうと思うし」
さすが12月で外はすっかり真冬の寒さになっていて、厚手を一枚羽織ってきてもまだ寒いぐらいだ。
それでもこの世界の夜空は相変わらず綺麗で、見ていると寒さなど忘れてしまいそう。
ここでこの子を育てたら、健やかに育つだろうな。
「私も微力ながら、協力します。・・・凪様」
「どうしたの?」
いきなり咲ちゃんは深刻そうな声で私の名を呼ぶ。
ただごとではない様子だと言うことがすぐに分かり、私も頭を切り替え相談に乗る心構えをする。
たまには私だって頼りにされたい。
「私、南方先生に求婚を申し込まれました。すごく嬉しかったのですが、お断りをしました。だって南方先生には婚約者がいるのに、私だけ幸せになることなど出来ません」
「は、マジ?最低。優しすぎるからって、女心をまったく理解してない」
ある意味二股最低野郎発言に、私は目を丸くして怒りに燃えた。
南方先生がそんな奴だとは思わなかった。
大体咲ちゃんのことを本気で愛してるんだろうか?
だとしたら、婚約者は?
考えれば考えるほど、南方先生の軽率な行動が許せない。
「・・・・・」
「咲ちゃん、南方先生のことなんて忘れて、お見合いしようよ」
今にも泣き出しそうな咲ちゃんに、私は思いきってお見合い話を切り出した。
アーネストも間違えなく失恋は確定なんだから、こうなった以上当初の予定通り二人をくっつけちゃおう作戦を実行するしかない。
「・・・お見合いですか?」
「うん。相手はアーネストなんだけれど、・・・咲ちゃん異人は嫌い?」
「そのようなことはありませんが、いきなりのことでびっくりしただけで・・・」
「それもそうだね。でも私咲ちゃんには幸せになってもらいたいんだ」
思いっきり先走る私に咲ちゃんはついていけないようで、戸惑い言葉を選びながら答えをくれた。
それは咲ちゃんの優しさで私はいったん引き下がり、でも思いだけはしっかりと伝える。
これでますます咲ちゃんには、幸せになってもらいたいと強く思う。
「・・・考えてみます」
私の思いは通じたのか、咲ちゃんはちょっと前向きになってくれた。