夢幻なる絆

□12.護りたい者のため
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「旦那様、食事の支度ができましたので、お持ちしました」
「入りなさい」

梅さん登場により、待ちに待ったご馳走がついにやってくる。
タイの尾頭付き・さつま揚げ・てんぷら・お赤飯。
どれも美味しそうで、自然とよだれが出てくる。

「夕凪、よだれ。まったくしょうがないね」

いち早くそれに気付き、呆れつつも帯刀さんは私のよだれをふく。
いつものこととは言え、恥ずかしい。

「旦那様。町の方々からいろいろお祝いの品が届いてます。奥様は人気者ですからね」
「え、そんなことないですよ。後でお礼にいくので、お祝いをくれた人達を教えてください」
「そうだね。お礼の文を書いて、粗品も渡さないといけないね」
「はい、分かりました。まとめておきます」

人気者なんて私とは無縁な言葉で梅さんの勝手な思い込みだと思うことにして、マナーとしてお礼をすることにした。
帯刀さんもそれには賛成してくれる。
この時代の粗品はどんな物だろう?

「それじゃそろそろ始めよう。今日は妻のためわざわざありがとう。それと前回延期になってしまった南方先生と咲くんの件も兼ねようと思う」
「え、いいですよ」
「そうですよ。お気持ちだけで私は嬉しいです」
「いいじゃねぇか。お祝い事はいくらあったって構わねぇ。なぁ、凪?」
「うん、そうだよ」

祝賀会は始まり突然のことに南方先生と咲ちゃんは戸惑い遠慮するけれど、龍馬と私は全面的に帯刀さんの提案に乗る。
きっと延期になったのは私のせいだから、寧ろそうしなきゃ悪いと思う。
龍馬の言う通りだし。

「そうですか?ならお言葉に甘えて」
「旦那様、あまり飲みすぎないでくださいね。今日は奥様がいるのですから」
「分かってる。期待は裏切らないよ」

意味深な梅さんのさらりと言う発言に、帯刀さんは分かりきったかのように答える。
私にもわかったため、顔を真っ赤に染まらせウジウジした。

つまりそう言うことだよね?
期待は・・・してるか。

「梅、そう言うことは客人の前で言うことじゃないだろう?」
「そうですか?それはすみません。では何かありましたら、お呼びください」

咳払いして今のことを注意する西郷さんだったけれど、梅さんは反省することなくそう言って部屋を出て行った。
梅さんはあらゆる意味で最強の女中です。

「乾杯でもしようぜ?」
「そうですね。凪さん、お願いします」
「え、私がやるの?」
「主役だからな」
「ついでに何か抱負を言いなさい」

突然渓から大役を任されただけでなく、帯刀さんから更なるプレッシャーを与えてくる。

抱負・・・。
それは私が一番嫌いな言葉。
何を言えば良いのか分からない。

「元気な子供が産まれるように、毎日規則正しい生活を心がけます。無茶は絶対にしません」
「それは、当たり前。これからは子供のことだけ考えて・・・もちろん私のことも考えなさい」
「分かってます」

無難な抱負は駄目出しをくらい、家族のことだけを考えることになった。
つまり四神の神子としては、何もするなと言う意味。
そう言われるのも分かるから、素直にうなずく。

「私も医師として出来るだけ協力します」
「よろしくお願いします」

南方先生の協力があれば百人引きだ。



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