夢幻なる絆

□藤原兄妹番外編
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マリア、祟を祝う。


「祟、誕生日おめでとう。はい、これプレゼント」
「え、いきなり?」

待ちに待った祟の誕生日がやってきて目が覚めてすぐ祟の部屋に行き、お祝いしながらプレゼントを渡したら祟はきょとんとしてなぜか戸惑うのだった。

私は何か間違えたことをしたのだろうか?

「駄目?」
「いや駄目とかじゃなくって、こう言うのはタイミング・・・まあいいか。ありがとうマリアちゃん」

不安で聞いてみると何かを言い掛けたけれど中断し、笑顔に変わりお礼を言われプレゼントの包みをあける。
祟の笑顔が見られて嬉しいけれど、何を言いたかったのだろう?

タイミング?
プレゼントは最初に渡すもので、私の時もそうだった。
お兄ちゃんが来るとすぐにプレゼントをくれて、お兄ちゃんの手料理をいっぱい食べた。
だから私は祟に一番にあげて喜んでもらいたい。

「わぁ〜マフラーだ。これってまさかマリアちゃんの手編み?」
「うん、祟を思いながら、一生懸命編んでみ」
「ありがとうマリアちゃん。ボクとっても嬉しいよ」

包みを開けた祟は目をまんまるくして聞くからちゃんと答える途中、祟は興奮気味でまたお礼を言って私を抱き締めすごく喜んでくれる。
店員と凪の言う通り、手編のマフラーは効果抜群。

「祟が喜んでくれて私も嬉しい。凪も帯刀に手編のマフラーをプレゼントしたら、すごく喜んでくれたんだって」
「当たり前だろう?大好きな女の子の手編のマフラーは、どんなものより高価で嬉しいんだよ。それにマリアちゃんセンス良いからね。これから外出する時は、必ず巻くね。早速朝食を食べたら、どこか遊びに行こう」
「うん。なら私は祟にもらった服に着替えてくる」

嬉しい誘いに断る理由もなくそれがいいと思ったから頷きそう言ってみる。
本当は私が祟を誘おうとしたんだけれど、誘われて良かったと思う。

どこに行けば楽しいだろう。

「じゃぁ準備ができたらリビングに集合だよ」
「分かった」

と言って、私は自室に戻る。








「良いか二人とも、今夜はご馳走だから、早く帰ってくるんだぞ?いくらここの治安がよくても、お前らはまだ子供なんだからな」
「なんか渓兄って口うるさい母親みたい。たまにはいいじゃん」
「よくありません。夜のデートなんて少なくても後三年早い」

朝食が終わりいざ出掛けようとすれば、お兄ちゃんがやって来て私達にそう告げる。
それに愚痴る祟だったけれど、効果がなく許しがでなかった。
私はご馳走が食べられて文句はないのに、なんで祟は愚痴るのかまったく分からない。

お兄ちゃんのご馳走はいらない?
なんで?

「祟、お兄ちゃんに祝って欲しくない?お兄ちゃん祟のために一生懸命作るのに、そんなこと言ったら悲しい・・・」
「えあ、マリアちゃん誤解だよ。そんなこと絶対ないから大丈夫だよ。ボク渓兄のこと大好きなこと知ってるだろう?」
「本当?」
「本当に本当」

私の予想は勘違いらしく祟は懸命に否定して、お兄ちゃんは笑いを懸命に堪えている。
お兄ちゃんにはちゃんと分かっているみたいだから、よく分からないけれど安心した。

「ならマリアがそれを望むようになったら、夜のデートも笑顔で認めてやるよ」
「・・・分かった。行こうマリアちゃん」
「待って、祟」

だけど祟は納得いかないようででも頷きそう言い捨て、一人で先に行くから私は追いかけついていく。
ますます訳が分からなくなったけれど、なんだか急に元気がなくってイライラしている。

その原因は、私のせいなんだろうか?
今日は祟の誕生日だからずーと祟には笑って欲しいのに、私が何も分からないから嫌な思いをさせた?
祟の望みは、一体何?







「マリアちゃん、マリアちゃんにとってボクは一体何?」
「え、私の自慢の彼氏で婚約者」
「本当にそうなの?渓兄にボクがマリアちゃんの婚約者だって言われたから、そう言っているだけじゃないの?」
「違う私は本当に・・・」
「ならもし渓兄に、ボク達のことを反対して敵だと言われたら、マリアちゃんはどうするの?」

祟の突然の問いに私は思っていることをちゃんと目を見ながら言ったのに、信じてくれず疑い意地悪な問いを再び投げかけられて私は口を閉ざす。
お兄ちゃんの言った言葉は絶対で、今までそれに疑問を抱いたことはない。
だってお兄ちゃんはなんでも知っているから、間違えたことは言わなかった。
祟の言う通りお兄ちゃんが祟が私の婚約者だと言ったから、私は迷うことなくそれに従っただけ。
でもそれは最初の頃だけで祟と一緒にいるうちに、楽しくて嬉しいと思い始めた。
私が初めて持った感情。
それの感情が大好きってことだと、私は学んだ。
だから・・・。

「お兄ちゃんは私が好きな人を否定しない。それにもしお兄ちゃんがそう言ってきたら、祟の良い所をいっぱい教えて認めて貰う。私は祟が好き。大好き」

自分の気持ちがちゃんと伝わらないのは悲しいことで、どうにかして分かった貰いたいからその答えを真剣に答えた。
ちゃんと伝わって欲しい。

「マリアちゃん・・・。ごめん、ボクがいけなかったね・・・マリアちゃんが渓兄の味方ばかりするから、少し渓兄に嫉妬しただけだよ」
「分かってくれた?」
「うん、すごくよく分かった。ボクが思っている以上に、マリアちゃんはボクの事が好きでいてくれるんだね。それが分かって嬉しいよ」

真剣に話したかいがあってようやく私の思いは伝わり、祟は恥ずかしそうにそう言った後ようやく今朝の笑顔を見せてくれる。
祟の一番似合う表情。
私と祟は同じ気持ちのままで嬉しくて、これからは祟の味方もしようと思った。
嫉妬は辛いと凪から聞いているから、これ以上嫉妬させたくない。
私も嫉妬をするようになるんだろうか?
今はまだ祟が私じゃない誰かを好きになってその人と幸せにれるのなら、私は喜んで応援に回ることが出来る。
嫉妬なんてしない。


「ねぇマリアちゃん。目を閉じてくれる?」
「うん、いいよ」
「・・・マリアちゃん、大好きだよ。チュッ」

頼まれた通り目を瞑ると祟はいつもと違う声でそっと耳元で囁いたと思ったら、唇に何かが暖かい物が重なり合い強く抱きしめられる。
初めて感じる感触だったけれど、甘酸っぱい味がするような気がした。
もっともっと祟の傍にいたいと思えて、私も祟を強く抱き返す。

それは私のファーストキスと呼ばれる物だった。


「今日はいっぱい遊ぼうね」
「うん!!」


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