夢幻なる絆

□藤原兄妹番外編
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マリア、初めて花火を見る。



「これでよしと。本当にお前は何着せても似合うな。すごくきれいだ」
「ありがとう。でもお兄ちゃんもなんでも似合う」

花火大会へ行くことになりだったら浴衣がいいとお兄ちゃんは言い出し、まずは私の気付けをしてくれた直後の会話。
浴衣なんて初めて着る私は普段より心が弾んでいて、鏡にはなんだかいつもと違う少しだけ大人の私が映っている。
髪をアップにしているからだろうか?

「ありがとう。祟が来る前に俺も着替え・・・」

ジッー


「マリアちゃん、渓兄」
「あ、祟だ」

チャイムの音と同時に、祟の声が聞こえた。
だから私は玄関に行きすぐにドアを開け祟を迎え入れようとすると、祟は金魚のように口をぱっくり開け私をじっーと見続ける。
明らかに、様子がおかしい。

「祟?」
「マリアちゃん。すごく可愛くて綺麗だよ!!その浴衣どうしたの?」

不安を感じながら声をかければ祟の表情は一瞬でかわり、勢いよく私をぎゅっと抱き締め興奮ぎみで誉められ質問もされる。

「お兄ちゃんが花火には浴衣だって言って、着付けて貰った」
「ああ、母上の浴衣をマリア用に直して着付けたんだ」
「渓兄・・・」
「なんだい?」
「なんでもそつなくできるんだね」

私の答えにお兄ちゃんがやって来て詳しく話すと、祟はあっけに取られそんなお兄ちゃんに感心した。
お兄ちゃんは祟の言う通り、なんでも出来るし物知りだ。

「そうだな。少し練習すれば大概の事は出来る」
「さすが渓兄。マリアちゃんにとって渓兄は自慢のお兄ちゃんだね」
「自慢のお兄ちゃん?」
「そう。マリアちゃんは渓兄を誰に紹介しても恥ずかしくないでしょ?頭脳明晰でイケメンで運動神経抜群。おまけに家事全般も得意だし性格だって良好」
「うん!!お兄ちゃんは私の自慢のお兄ちゃん」

祟に教えられた言葉があまりにもピッタリだったから、私は嬉しくなって大きく頷きそう言ってお兄ちゃんの顔を見上げる。
するとお兄ちゃんは少し照れていたけれど、嬉しそうだった。
私の大好きで自慢のお兄ちゃん。

「ありがとうマリア。じゃぁ俺も着替えるから、マリア祟にジュースを出してやれ」
「分かった。祟、リビングに行こう?」
「うん。実はボク、喉カラカラなんだ」

お兄ちゃんに言われて私はそう言うと、祟は笑顔で答え私達はリビングに急ぐ。







「人が沢山いる・・・」
「ああ、これは予想以上だな。マリア、大丈夫か?」
「・・・うん」
「本当に?無理しなくてもいいんだよ」

会場につき車から降りると、今までに見たことのないぐらいの沢山の人に私は圧倒される。
人混みにまだなれてない私をお兄ちゃんと祟は心配してくれるけれど、私はどうしても花火を三人で見たいから我慢をすることにした。

花火と言うものは、夜空に浮かぶ綺麗な大輪の花。
見たことがない私には未知なる物。
だから・・・。

「花火が見たいから、このぐらい平気」
「そうか。もし我慢できなくなったら、すぐに言うんだぞ?約束だ」
「お兄ちゃん、ありがとう」
「ならはぐれないように、ボクと手を繋ごうよ」
「うん。祟もありがとう」

わがまま言っても二人は嫌な顔をせず、それでも私を助けてくれる。
私は二人に感謝して言われた通り、祟が差し伸べてくれた手を掴む。
祟はお兄ちゃんと違い赤の他人で私の事を知っているのに、こうしていつも笑顔で私の傍にいてくれる。
それは祟が私の婚約者でいつか家族になるからだと、お兄ちゃんが教えてくれた。
私は祟が好きだから、それは嬉しいこと。

「ならマリアと祟は場所とり頼むな。俺は適当に食料調達してくるから」
「そうだね。ボク、激辛の食べ物が良い」
「了解!!マリアを頼むな」
「任せてよ」

ってお兄ちゃんはテキパキと私達に指示をして、人混みの中に消えていった。

お兄ちゃんは人混みの中でも、平気なんだろうか?









「祟?こんな所で・・・まさかデートか?」
「げ都姉?そうだよ悪い?」

祟の提案で人混みから少し離れていい場所を探していると、男性のような女性に声をかけられた途端祟はばつの悪い顔をしながらも肯定する。

デート?
これはデートなんだろうか?
デートとは好き同士の男女が遊びに出掛けること。
・・・デートか。

「へぇ〜、どうも最近私らとの付き合いが悪くなったと思ったら、いつの間にこんな可愛い彼女が出来ていたとはね」
「いいだろう?別に。お姉ちゃんと瞬兄には黙っててよ。時が来たらちゃんと紹介するんだから」
「はいはい、分かった分かった。じゃあ私は天使が待ってるから」

祟とは違い都と呼ばれる女性は機嫌がすごくよく祟の言葉をあまり聞かず、軽く返事をするだけしどこかに行ってしまった。
嵐のような人だった。

「本当に分かってくれてるのかな?マリアちゃんのことはまだお姉ちゃんには隠しておきたいのに・・・」
「祟?」
「あ、マリアちゃんごめん。この辺でいいかな?」

突然祟の表情が曇り憎しみと悲しみが混ざり小声で何か呟くけれど、私が声を掛けるともとの祟に戻り笑顔に変わったが偽りに見える。
余計に心配になっても私には何もできなくて、私まで悲しくなった。

私は何も出来ない?
そんな時だった。

どーん
ば〜ん


「キャッ!!」

ただごとではないとてつもない爆音が鳴り響き、私は反射的に祟に抱きつき小さくなり怯えた。

爆弾?
襲撃?

「マリアちゃん、大丈夫だよ。花火が打ち上げられただけだから」
「は・な・び?これが?」
「うん、空を見てみなよ」

そんな私を祟は笑いながら爆音の正体を教えてくれ、私は半信半疑で言われた通り夜空を見上げる。

花火は綺麗なものなのに、どうしてあんな怖い爆音がする?
信じられない。

ひゅ〜
ドッッ、ば〜ん


「わぁ〜、すごい。本当に夜空に大輪の花が咲いてる」

爆音と共に何かを打ち上げられたと思ったら、夜空に色鮮やかな花が咲きそしてすぐに消えた。
それの繰り返し。
生まれて始めてみる幻想的な光景に、私は目が離せず夢中になる。
お兄ちゃんに教えてもらい想像していた以上。

「すごく綺麗」
「・・・マリアちゃんの方が綺麗だよ」
「え?」
「ボクマリアちゃんの事が大好きだよ。だからずーっと一緒にいようね」

自然とそんな言葉を溢れこぼれ落ちると隣で見ている祟が何かおかしなことを呟き私はびっくりして視線を変えると、祟は頬を赤く染めでも笑顔でまったく関係のないことを言って私の頬にキスするのだった。




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