夢幻なる絆
□11.真犯人は誰?
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「それで?医学館以外に、南方先生を逆恨みしている者は?」
「そうですね。・・・強いていれば三隅先生とか。彼は以前の誤診をしまして、南方先生が見つけたことがあるんです」
医学館との一部始終の事情を知ってうんざりげの帯刀さんはそれでも真犯人を探すため真相を求めるが、返ってきた答えがまたしても低レベルと言うかありがちな理由に肩を落とす。
所詮人間の性質なんて、百何十年経っても進歩はしません。
「しかしあのお方は、今では奥医師。恨んでいるとは思えません」
「それもそうだな」
しかし予想に反して落ちぶれてはないらしく、容疑者からあっけなく外される。
確かにそれでも逆恨みする人は、普通だったらいないと思う。
「いずれにしろ私は明日江戸城に行ってくるから、君達は他に怪しい人がいないかを探るように。チナミはマリアくんと、それから夕凪は龍馬と行動を共にすること。龍馬、夕凪を頼んだよ」
「分かってるって。暴走をしないように見張っとけばいいんだろう?」
「ああ、四神達がいるから危険などは心配してないけれど、その分何をしでかすか分からないからね」
「・・・・・・」
相変わらず真顔でひどい言い方をする帯刀さんに、私は何も言えず涙を飲んで肩を落とした。
図星だから・・・。
四神達がいるから多少無茶をしても大丈夫だから、きっと私はだいたんなことをやると思う。
だってそうでもしないと真犯人は捕まえられない。
なんでもお見通しだね?
「チナミ、宜しくお願いします」
「え、あ、こちらこそ」
「チナミは私の友達?」
「え、まぁお前がいいのなら」
「うん、なら友達」
それはマリアちゃんにとっては重要なことでもあまりにも問いが唐突すぎたため、チナミちゃんの顔は真っ赤に染まり視線を不自然に泳がし髪をいじり始めた。
マリアちゃんは満足したのか、とても嬉しそう。
微笑ますぎる光景に、見ていてホッとする。
「若いとはいいですな」
「まったくです」
そう思っているのは私だけではないようで、先生達もそう言い合い重いムードから一気に和やかなのほほんムードになった。
「マリアちゃん、良かったね。だから大丈夫だって言ったでしょ?」
「うん。チナミ、私と友達になってくれてありがとう」
「別に礼を言われるほどのことをしてはない。・・・じゃぁ明日迎えに来る」
これ以上ここにいるのは恥ずかしくて堪えられなくなったのか、少し怒った口調でそう言い立ち上がり部屋から出ていき帰ってしまった。
明らかに照れ隠しだ。
まったくそう言う所は、可愛いんだから。
「どうやらチナミはマリアくんに気があるようだね。まぁこれだけ無垢で愛らしいのだから仕方がない」
「そうですね。萌え要素満載ですから」
そんなチナミちゃんを帯刀さんは面白そうに見ていたようでやたらに納得していて、私も嫉妬することなく頷き思っていたことを口にする。
龍馬がいる手前チナミちゃんの好きな人がゆきだなんて口出しては言えないけれど、もしかして少しずつマリアちゃんに心変わりしているかも知れない。
それだけの魅力をマリアちゃんは持っているからね。
でもマリアちゃんにはもう祟くんと言う彼氏がいるから、チナミちゃんには可愛そうだけれど失恋決定か。
マリアちゃんって結構意志が強そうだから、心変わりとかしなさそう。