夢幻なる絆
□11.真犯人は誰?
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「だったら龍馬は本当に普通の友達?」
「そうだよ。マリアちゃんだってチナミちゃんとは普通の友達でしょ?」
「チナミは私の友達?チナミは迷惑じゃない?」
「迷惑ではないと思うよ。チナミちゃん、マリアちゃんのこと気に入っているみたいだし」
「そうか。チナミは私の普通の友達か」
ようやく問題解決になったのか、マリアちゃんの声は明るくなり楽しそうだった。
気のせいじゃなくってほんの少しずつだけれど、最初の頃よりマリアちゃんの表情は豊かになっている。
異性の友人は普通の友達。
私も誤解されないように、そう呼ぶようにしよう。
「でもだからと言って隠れて会うのは御法度だよ。ちゃんと遊んだことを随時報告して、その時はいつも以上に甘えれば問題ないと思う」
「そうなんだ」
「うん。男性なんて案外単純だからね」
私の端から見たら異常にしか取れない教訓をマリアちゃんに教えて、調子に乗り余計な口に出してはいけないことを言って笑う。
帯刀さんはとんでもなく嫉妬深い人だけれども、きっと私も同じぐらい嫉妬深いからおあいこ。
「でも甘えるって、何する?」
「一日中彼に子犬見たく寄り添って、甘い声で可愛らしくおねだりすればいいんだよ」
「そう言うのは重いって、祟が言ってたけど?」
「うっ・・・確かに普通なら重すぎるかも」
私なりの最大級の甘え方を伝授すれば、痛いほどの図星をつかれ撃沈する。
まさか純粋すぎるマリアちゃんに、こんな事言われるとは思わなかったから余計。
祟くんには重すぎる愛情表現。
逆効果間違えなし。
辞めといた方が良い。
「マリアくんの彼氏はまだまだみたいだね。愛する女性に甘えられるのは、男性にとっては一番の幸福なんだよ」
「あ、帯刀さん、お帰りなさい。早かったですね」
「ただいま。夕凪がまた暴走すると思ったら、居てもたってもいられなくなってね。早めに切り上げてきた」
「・・・・・・」
さすが私を知りつくした帯刀さんだけあってその気がなくても言われると、ごもっともな気がして何も言い返せない。
探偵の真似事をすると言ったら怒るかな?
だけど真犯人を見つけないと、南方先生だけじゃなくって私達の命もない。
私の命なんて、どうでもいいけれど。
「帯刀、おかえり。帯刀は嬉しい?」
「当たり前でしょ?それだけじゃ物足りないよ」
「物足りない?つまりそれは大人の恋愛?」
「そうだね。それこそが真実の愛だよ」
そんな私を帯刀さんは背後からぎゅっと抱き締めながら、マリアちゃんの問いに機嫌よく答え私の頬にキスをする。
するとマリアちゃんはなにやら難しそうに考え出す。
そう言えば今朝も愛について聞いてたよね。
それと関係があるのかな?
まぁマリアちゃんもそう言う年頃だと言えば年頃だからね。
「だから夕凪も躊躇なく私のことを今以上に愛しなさい。それ以上私は夕凪を愛してあげるから」
「言ってて恥ずかしくないですか?」
「ああ、私は真実しか言っていからね」
言われて滅茶苦茶恥ずかしくて顔を真っ赤に染める私を、帯刀さんは涼しげに微笑んだまま頷く。
今のままでも十分愛されているのに、それ以上愛してくれる。
世間ではこれを重い愛情と言うけれど、それって幸せなことなんだと私は思う。
恥ずかしいけれど。
「なんとなく分かった気がする。二人ともありがとう」
何が分かったのか知らないけれどマリアちゃんはいきなりそう言って、元気良く部屋を飛び出していく。