夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
5ページ/33ページ


「橘咲 南方仁。吟味のためそなた達を確保する」
『え?』

何もかもがうまくいきみんなホッとし部屋を出ると、ヤギナタを持った姉ちゃん達が怖い顔をして南方先生と咲ちゃんに突き付け取り押さえられる。
こればっかり帯刀さんさえ一瞬呆気に取られるけれど、すぐに我へと戻る。
南方先生と咲ちゃんは可愛そうにどうしていいか分からず、混乱しているようで挙動不審になっていた。

今度は一体なにが起きたの?

「お待ち下さい。これは一体どう言うことなのでしょうか?」
「宮様はその者達の菓子を食べ倒られました」
「あの菓子なら、毒味したではないですか?」
「毒味前の物も召し上がれておいでです」
「それなら私も食べましたけれども、なんともありません。大体もし仮にそうだとしても、時間が経ちすぎてるでしょ?ヒ素なんて即効性の毒薬なんですよ。変な言いがかりは辞めて下さい」
「うっ・・・」

それはありえないほどの言いがかでああ言えばこう言う状態になったけれど、珍しく私のまともな言い分が説得力大でお姉さん達の勢いはなくなり口ごもった。

そう思うのはまぁ百歩譲って分からなくもないけれど、そんな物的証拠もないのに私の大切な友人を犯人にするなんて許せない。
そもそも南方先生には動機がない。

「その者は奥医師でさえ知らない治療法を知ってました。自作自演で力を示して、出世を企んでいたのかも知れません」
「は、奥医師ってそんなに万能なの?面白い冗談言わないでよ」

まるでラスボス登場かのようにお付きの人登場で更なる訳のわからない言いがかりを言われ、頭に来た私は立場など考えずに鼻で笑い心底馬鹿にした。

将軍様の奥方のお付きの人と、家老の奥方はどっちが偉いんだろうか?
でもこの場合友人達が冤罪になりかけているんだから、少しぐらい生意気なことを言っても良いよね?

「夕凪、落ち着きなさい。あなたは南方仁は薩摩藩の名誉藩医だと承知の上で、そのようなことを言っているのですよね」
「薩摩藩の名誉藩医?知りませんが、だからなんなのですか?」

もはや冷静な判断ができないのかそれとも格下にみているのか付き人は、帯刀さんの警告になど聞く耳持たずそれでさえ馬鹿にした言い方で言葉を返す。

いいのかそれで?

「分かりました。一度あなた達に二人の身柄を委ねますが、真犯人が見つかり冤罪だとわかったら誠意を見せて謝罪をして下さい。それと真犯人はこちらで処刑を行います」
「しょ処刑?」

それでも帯刀さんは引くことなく、淡々とした口調で条件をだす。
迫力があって内容からしてもも怖すぎる。
それでいて多分彼は本気で、真犯人を見つけたら実行するだろう。

・・・将軍様の奥方を殺害しようとしたのだから、処刑されるのは当然と言えば当然か。

「いいでしょう。ただし真犯人がいなかったら、あなたもそれなりの覚悟はして下さい」
「無論です。その時はさらし首にしようが、切腹しようが好きにして構いません」
「私もその時はどんなことでもします。私は南方先生と咲ちゃんのことを信じていますから」

物事は簡単にいかないようでお付きの人からも交換条件を出されるけれど、帯刀さんは覚悟の上だったようで交渉はすんなり成立。
私も悔しくて、ついその提案に便乗する。
命を掛けるのは、信じているから怖くなかった。
帯刀さんだってそう思っているから、そんな掛けに乗ったと思う。

「帯刀さん、凪さん・・・。ありがとうございます。・・・すみません」
「凪様、帯刀様。よろしくお願い致します・・・」
「任せてよ。すぐに真犯人を見つけて、無実を証明してみせるからね」
「連れて行きなさい」

私と帯刀さんにすべてを託された私は胸を張って了解すると同時に、お付きの人の鶴の一声で二人は連行されていった。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ