夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「楽しみですね」
「そうですね」

芝居が始まる少し前、私は和宮様と並び特等席で今か今かと待っていた。
背後にはお付きの人と、帯刀さんがいる。
南方先生と咲ちゃんは私達と別の離れた席で観ることになっていて、ここからは残念ながら確認することは出来ない。
ちょっと残念。

「まだ始まってませんが、もう一つ安道那津を食べても良いですよね?」
「ええ。せっかく和宮様のために作ったのですから、好きなだけ食べて下さい」
「ですよね。なら・・・」

すっかり安道那津が気に入ったらしくそう私にねだるように言って頷くと、嬉しそうに和宮様は安道那津を取り可愛らしく食べる。
背後からお付きの人の声が聞こえたけれど、和宮様は聞く耳持たずでスルー。
そしてお茶も飲む。

安道那津を食べると飲み物が恋しくなるもの。
お茶も良いけれど、愛称抜群なのはやっぱり紅茶。
和宮様にも教えて・・・紅茶は外来の飲み物だから今はやめた方がいいか。
なんせ将軍様の妻だし。

などと考えながら私もお茶を飲んでいると、突然和宮様は苦しみだしその場に倒れる。

「え、和宮様?」
「宮様、しっかりして下さい」

あまりにも突然なサスペンス物の初っぱなの展開に 現実感がなく唖然としている私とは違いお付きの人は顔を青ざめ和宮様の所に駆け寄り懸命に呼ぶ。
パニックになっている。

「とにかく奥医師を呼んできなさい。それと南方先生には待機するように伝えて」
「あ、はい」

帯刀さんだけが冷静で渡り廊下にいた藩士達に指示をして、辺りは一気に騒々しくなり芝居見物所ではなくなってしまった。











「・・・毒?」
「ああ、毒はおそらくヒ素。何者かによって何かに毒を仕込んだらしい。今懸命に医師達が救命しているけれど、あまり状況はよくないそうだ」
「そんな・ ・・あっ牛乳?そう牛乳を飲ませれば・・・」

意識のない和宮様を別室に運ばれ私は南方先生達と待っていると、和宮様の様子を見に行っていた帯刀さんが戻って来たけれど思わしくない状況だった。

和宮様が死ぬ?
せっかく仲良くなりかけていたのに、こんなことで死なせたくない。
大体どうして和宮様が殺されなきゃいけないの?

どうにかしたいと思い必死にない知恵を絞り、某推理漫画に出てきた毒の対処方法を口にした。
しかし南方先生は難しい顔のまま首を横に振る。

「凪さん、それは応急処置です。その場しのぎしかなりません」
「あ、そう言えばそうだった・・・」

否定されてそうだったことに気づき、肩を落とし深いため息をついてしまう。
私などの浅知恵なんか所詮そんな物で、ほとんどがなにも役立たない。

「でも胃を洗えば、もしかしたらなんとかなるかも知れません」
「胃を洗う?それは未来の対処法なのですか?」
「はい。こちらの世界でも方法はあります」
「・・・分かりました。その言葉を信じて南方先生が治療出来るよう私がなんとしても説得します」

さすが名医である南方先生はすぐに適切な対処法を見つけ出し医師の顔になり、帯刀さんにもその熱意が伝わったらしくその言葉を信じそう力強く言い私も和宮様の元に向かった。


そして南方先生のおかげで和宮様は一命を取り留め、それでめでたしめでたしとなるはずだったけれど・・・。

これがすべての元凶の始まりだった。




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