夢幻なる絆
□11.真犯人は誰?
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「いらっしゃいませ」
「は?」
「え?」
デパートに辿り着き建物の中に入ると、笑顔の店員らしき女性に歓迎される。
思わぬ出来事に私と祟はびっくりし過ぎて、開いた口が塞がらずその場に立ち止まった。
だってお兄ちゃんにはこの世界には私達と凪達に、龍神の神子と八葉しかまだいないと聞かされていてたから。
龍神の神子がデパートで店員なんかやっているはずがない。
その証拠に祟だって驚いている。
「そんなに驚かないで下さい。私は湛渓様の式です。マリアさんと祟さんの接客をするように申しつけられております」
「・・・渓兄って、陰陽師の素質もあるんだね?」
「ええ、湛渓様は一度に20体の式を同時に操れるんです」
「さすがお兄ちゃん・・・」
店員に正体を明かされお兄ちゃんの新たな特技も教えられ、私達は再びびっくりしてそして感心する。
お兄ちゃんが陰陽師の勉強をしてたことは知っていたけれど、まさかそんなにすごいとは思っていなかった。
でもなんでも出来るお兄ちゃんなら、当然なのかも知れない。
「では早速ですが、ご用件を何なりと申しつけ下さい」
「それならベビー用品を売っている所に案内してもらおうか?」
「うん、店員、お願いします」
「はい、かしこまりました。それではこちらへ」
「・・・祟、凪に何をあげたら喜んでくれる?」
「そうだね?まだ性別が分からないから洋服系はNGだから、おもちゃ・・・ぬいぐるみなんてのはどうかな?」
店員の案内でベビー用品のフロワーに来たのはいいけれど、あまりの広さに圧倒されながら祟に助言を求める。
すると祟はぬいぐるみが沢山置いてある棚を指差し、ごもっともなことを教えてくれた。
確かにそうだ。
ぬいぐるみはどれも可愛らしく、特にふわふわなペンギンが人目見て気に入ってしまう。
「自分のも買っていい?」
「だったらボクが買ってあげるよ。と言ってもお金なんて払わなくてもいい」
「いいえ。ある程度は割り引きしますが、きっちりと払って頂きます。立派な大人にはなるには、物の価値観を大切にすること。と堪渓様はおっしゃっていました」
「ちぇっ。渓兄ってそう言う所だけは、堅物なんだよな。え〜とお金は足りるっけぇ?」
店員が厳しくお兄ちゃんの言付けを言うと、祟は文句を言いながらも財布を出し中身を確認する。
お兄ちゃんの言うことなら間違えがないと思うけれど、祟には悪いことをした。
私がわがままを言わなければ、こんなことにはならなかった。
だから
「自分で買うからいい」
「マリアちゃん、誤解しないで。ボクはマリアちゃんにプレゼントをしたいの」
「でもお金が・・・」
「遠慮しなくてもいいんだよ。それなら安道名津のお礼ってことならいいでしょ?」
迷惑をかけたくなかったから断ったのに祟は嫌な顔をせず、ペンギンのぬいぐるみを私から取った。
ここまで言われたら逆に断るのは悪い。
「ありがとう祟。大切にする」
「どういたしまして。そんなに喜んでもらえると、ボクまで嬉しくなるよ。お姉さん、これ綺麗にラッピングしてね」
「はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」
素直にお礼を言うと祟も笑顔になり店員にペンギンのぬいぐるみを渡すと、店員はそう言ってペンギンのぬいぐるみを受け取りラッピングを始める。
祟からのプレゼント。
喜んでもらうとあげた本人も嬉しい。
さっき祟に安道名津を挙げた時の私と同じ。
だから祟の気持ちがよく分かる。
「凪の赤ちゃんにはこのクマのぬいぐるみでいい?このクマもとっても可愛い」
「そうだね。ボクもこの子で良いと思う」
「ならこれにする。店員、これもラッピングして下さい」
「分かりました」
ペンギンのぬいぐるみの隣に置いてある少し大きいクマのぬいぐるみも可愛くて、祟も賛成だったので私は凪にそれを贈ることにした。
喜んでくれると、私も嬉しい。