夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「その箱はなんですか?中を開けてみなさい」
「は、これは安道那津と言うものです」
「これがあの」

安道那津の箱に和宮様の目に止まり問うと、先生が言われるがままに箱を開け差し出す。
すると和宮様は目を輝かせ、安道那津を取り一口食べる。
こう言う時は普通毒味をするものだから、私までビックリして時が止まった。
まぁ南方先生と咲ちゃんの手作りなのだから、毒なんて入っていないけど。

「宮様、それはまだ毒味をしていないのですよ」
「これは薬なのですよね?」

案の定にお付きの人に怒られる和宮様だったけれど、さらりと当然のように言い交わし無邪気な笑みを浮かべた。

確かに安道那津は、脚気予防の薬として献上している。
薬を毒味するなんて、聞いたことがない。
これにはお付きの人も正論なためか、何も言い返せず口黙った。
和宮様の方が上手らしい。

「凪さんも、どうぞ」
「え、いいんですか?」
「もちろん」
「わぁ〜、ありがとうございます。私この安道那津大好きなんです」

ありがたいことに和宮様から薦められ私は遠慮なく、そう言いながら安道那津をいつもの調子で食べる。
せっかく梅さんから礼儀作法の教育を受けたのに、すべてが台無しだ。
やっぱり私は私が一番良いのかも?

「夕凪、あんまりがつかない」
「ふへぇ〜?」
「・・・まったく・・・」

開き直って前向きに物事を考えている中帯刀さんから再びご忠告を耳打ちされるけれど、安道那津を頬張ったまま相打ちすれば呆れながらもハンカチで私の口元を拭く。
それは帯刀さんの優しさ。
でも今夜のお説教が、いろんな意味でとっても怖そう。
いくらなんでもお咎めなしはなさそうだよね。

「凪さんは安道那津を良く食べているのですね?」
「はい。安道那津考案した南方先生は、私の命の恩人でもある友人なんです」
「南方先生・・・?もしかして凪さんの後ろにいる人達?」
「そうです。南方先生は江戸で一番の名医なんですよ。隣にいるのがお弟子さんで私の親友の橘咲です」
「凪さん・・・」
「凪様・・・」

和宮様の問いに自信を持って、南方先生と咲ちゃんのことを大げさのようで真実を教える。
二人は顔を真っ赤に染め滅茶苦茶恥ずかしそうにして、和宮様はそんな二人を見て微笑み少し羨ましそうな顔も見せた。

「凪さんは毎日が楽しそうですね」
「和宮様・・・。私でよければいつでも話し相手になります」
「本当ですか?では今日は一緒に観ていただけますか?」

あまりにも和宮様が可愛そうになってきてさっき仲良くと言われたこともありそう申し出れば、和宮様はすごく喜び弱冠テーションを高くさせ子供のように無邪気に問う。
なんとなくそう言う所が、マリアちゃんに似ている。

和宮様も素直な少女?

「もちろんです。いいですよね帯刀様?」
「ああ、構わない。くれぐれも粗相がないようにするんだよ」

この場合帯刀さんにお伺いを立てるのが筋だと思い確認してみれば、反対する理由がないため簡単に許可を得た。
但しあらかじめ釘を刺されてしまい、それには何も言わず苦笑で返す。

最大限に気を付けますが、まったくもって自信はありません。




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