夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「祟、ただいま。はい、お土産」
「マリアちゃん、渓兄、おかえり。ありがとう」

元の世界の我が家としている場所に帰れば、いつもと変わらない祟がニコニコと出迎えてくれる。
マリアからお土産をもらいますますご機嫌になり、きっと中身を知れば今以上だろう。
お土産の正体は、マリアの手作り安道名津なのだから。

「どういたしまして」
「わぁ〜もしかしてこれがマリアちゃんが絶賛していた安道名津?」
「うん。梅さんに教えてもらって、私が作った」
「え、マリアちゃんが作ったの?嬉しいな。いただきます」

予想通り真相を知った祟は滅茶苦茶喜び、安道名津を豪快にかぶり付く。
そして幸せそうに笑顔を崩す。
本当に美味しいのだから、無理もない。

「気に入ってくれた?」
「うん、すごく美味しいよ。渓兄よりも」
「?私はお兄ちゃんのお菓子の方が、すごく美味しいと思うけれど・・・」

祟が言った本当の意味が分からないマリアは、不思議そうにそう言って首を捻る。
こう言う所を見てるとマリアはまだまだ子供だ。
それでいて素直過ぎて優しくて、段々母上に似てきた。
俺も祟の意見に同意する。
マリアの手作りはなんだって、世界一美味しい。

「ボクにはそうなの。ねぇマリアちゃん、これから何して遊ぼうか?」
「デパート行きたい」
「デパート?」

マリアにしては珍しい選択だったため祟は戸惑うが、俺には見当がついていた。

凪さんが妊娠(したらしい)から何かプレゼントしたいのだろう。
しかしこの世界のデパートは廃墟となっているから、祟は戸惑っている。

「復元するから、行っておいで」
「復元?そんなのできるの?」
「ああ。俺はこの世界を殺風景にするつもりはないよ。快適に暮らす合わせ世にしてみせる」
「さすが渓兄。だったら早速デパートに行こう」

今まで誰にも言ったことない計画の一部を教えれば、ますます祟は俺を尊敬する眼差しで見つめる。
祟がいた合わせ世を聞く限りでは、すべてが廃墟としている希望が持てない闇のような世界。
しかし俺がいるのだからそうはさせない。
マリアが望むがままの世界を作るだけ。

「うん、ありがとう。なら私用意してくるから、待っててね」

以前ならけして言うことがなかった女の子らしい言葉を言い残し、マリアは早足で自分の部屋に行ってしまった。

これも凪さんのおかげかも知れない。
それとも祟のおかげか?

「マリアちゃんって、最近すごく綺麗になっていると思わない?」
「だな。惚れ直したか?」
「まぁね。マリアちゃんじゃないけれど、マリアちゃんはボクの自慢の彼女なんだよ」

祟にもそのことに気づいているようでそんな祟をからかうつもりで問いてみたのだが、少しも恥ずかしがることもなく当然そうにのろけ話を聞かされる。
妹の恋路は俺が心配することなくても、ゆっくりでも順調に育っているようだ。
それは嬉しいことなのだが、兄としては淋しいことでもある。
だからまだマリアが本当の恋に気づいていない今だからこそ、この辺でハッキリさせておきたい。
今ならどっちに転んだとしても、まだ間に合う。

「祟は本当に俺達いやマリアを裏切らないか?」
「え?」
「もし白龍の神子がお前を救う方法を見つけたりしたら、お前は家族である奴らに寝返るのか?」
「酷いよ渓兄!!ボクが欲しい未来は、マリアちゃんと渓兄もいる世界なんだよ。ボクの家族はもうマリアちゃんと渓兄だけなんだからね」

俺の意地悪で酷い問いに、祟はムッとし俺を睨み迷いもなく力ある言葉でそう断言する。
嘘偽りがない祟の本心だと、俺の直感が言う。
どうやら信じても良さそうだ。

「悪いそうだったな。その言葉を信じるよ。・・・マリアのことを、これからも宜しく頼むな」
「うん、分かってるって。・・・渓兄、ありがとう」

これですべての準備は整った。



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