夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「凪は大丈夫?」
「ああ、心配しなくても大丈夫だよ。俺達は祟の元に帰ろう?」
「うん」
「ワンワン」

表向き凪さんが体調不良となり延期となった祝賀会からの帰り道、疑うことなく親身になって心配するマリアを俺は安心させるべくそう言い頭をなぜる。
するとマリアは素直に頷き、嬉しそうな表情に変わった。

組織の鳥籠に囚われていた半年前までのマリアには感情と言うものがないに等しく、唯一外の世界に憧れを抱き続けていた。
だからなのか仮と言えども自由を手にいれたこの半年と少しで、マリアの感情はすくすくと成長していることが目に見えて分かる。
あともう少しで表情も蘇るはず。
だから俺はそんな妹の小さくて当たり前な幸せを、例え世界中を敵に回しても護ってやるつもりだ。
父上は幼い俺に家族と仲間それから愛する人は、なにがなんでも守り抜けと教えられている。
俺にとってはマリアとそれからマリアの婚約者にした祟が大切な家族。
大切に仲間は、熊野の奴等と凪さん達になるだろうか?
マリアを裏切らない限り俺にできることがあれば協力するつもりでいるが、マリアを裏切るような行動を取れば同情も容赦もしない。
世の中あれもこれも望んだら何も手に入れられないことを、俺はあちらの世界で嫌と言うほど学んだ。

「ねぇお兄ちゃん。私が母さんのお腹にいる時、みんな嬉しかった?」
「当たり前だろう?お前が生まれてくることを家族だけじゃなく、熊野中の連中が盛大になって喜んでいたよ」

マリアの問いは大概突拍子のないことでも、俺は何気なくそう答え手を握りしめる。

マリアは多くの人達から望まれ生まれてきた大切な命だ。
なのにあいつは俺達家族から、すべてを奪った。
神と言う名の悪魔。

「だったら凪と帯刀の子も同じ?」
「え、凪さんは妊娠してるのか?」
「梅さんが、可能性があるって言っていた。あ、だから調子悪いのか」

マリアの問いにいくら予想内であるといっても、実際聞くと驚きはある。

凪さんの妊娠。
ますますこちらに有利な展開だ。
事実を知れば凪さんと帯刀さんは間違いなくこちら側。

凪さんの素性はすでに知っている。
本来ならばけして交わるはずのない世界が龍神と時空の神が力を失い時空が乱れたことにより、奇跡的に三つの世界は繋がった。
ただそれでも今のままでは繋がりが不安定なため、こちらの世界に長くは滞在できなず強制送還されてしまう。
だからもし燭龍を倒せば時空の乱れは正常に戻り、二度と三つの世界は交わることもない。
つまり龍神の神子達に協力すれば、凪さんと帯刀さんに永遠の別れが訪れる。
子供も生まれるとなれば、悪魔の契約も躊躇しないだろう。
そしたらこちらの世界の崩壊を150年ぐらいは遅らせても構わない。

「マリア、もうすぐでお前に本当の自由をあげるからな」
「私ももっともっと頑張る。みんなが笑って暮らせる世界になる?」
「ああ、お前がそれを望むのならば」

再びマリアにそう固く誓えば、マリアは無邪気に張り切り指切りをする。

マリアのみんなと言うのは、自分と俺と祟とコロ。
ひょっとしたら凪さんと帯刀さん南方先生達も含まれているかも知れないが、それにしたって小さな小さな世界。
そんな世界にするため、俺は龍神殺し計画をついに実行する。



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