夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「わぁ〜、美味しそう。さすが咲ちゃん。私が作るとのと出来が違うよ」

咲ちゃんお得意の厚揚げ豆腐はお皿へと綺麗に添えられ匂いも形もすべて美味しそうに仕上がり、その芸術作品に近いものに私はうっとりしてしまう。
同じものを私が作っても、形が崩れ残念な結果になる。

「奥様は豪快ですからね。こう言うものはゆっくり丁寧に優しくやるものです」
「・・・ですよね?」

梅さんからの図星でしかないきつい一言に、私は苦笑して肩を落とす。
料理と作法の梅先生の時は厳しく指導してくれるからありがたいんだけれども、それでもあんまり上達してないのはある意味才能?
確かに私にはそんな繊細な作業は、無理なのかもしれない。



「梅さん、出来た」
「あら、上手にできましたね」

そんな中さっきから何かを熱心に作っていたマリアちゃんが安道名津を持って梅さんに見せに来た。
売り物と変わらないきれいな形の安道名津だけれども、皮の中に何かが入っている。

「マリアさん、何を入れたのですか?」
「クルミと栗とさつまいも。食べる?」
「へぇ〜、いろいろ考えたね。ありがとう」

咲ちゃんも同じことを思ったらしく問えば、マリアちゃんは淡々と答え安道名津を差し出しくれる。

マリアちゃんが考えた安道名津だから、やっぱ渓と祟くんのためなんだろうね。
ゲームの中では一人孤独に戦っていた祟くんだけれど、現実ではちゃんと祟くんを考えている彼女がいる。
なんだか嬉しいな。

そして安道名津を二つに割り早速食べようとしたけれど、なぜかいきなり気持ち悪くなり洗い場で吐き出す。

風邪でもひいたのだろうか?

「凪様、大丈夫ですか?南方先生を呼んできましょうか?」
「奥様、ひょっとしてつわりではないでしょうか?」
「え?」

心配する咲ちゃんとは違い、梅さんは驚きながらも嬉しそうに思わぬことを問う。
一瞬耳を疑いびっくりするけれど、よく考えれば思い当たる節しかない。
生理は来てないし、貧血で倒れたし 味覚も変わった。

「それって凪のお腹の中に、赤ちゃんがいるってこと?」
「ええ、そうですよ。旦那様とのお子です・・・よね奥様?」
「あ当たり前じゃないですか?私そう言うことは帯刀さんとしかしてません」

まだちょっと信じられず混乱しているとマリアちゃんの素朴な問いに梅さんがわざとそう答えるから、私は勢い余ってすごいことを大声で断言してしまった。
言った瞬間顔が真っ赤に染まる。
それは咲ちゃんも同じ。

「おめでとうございます奥様。早速旦那様に報告しないといけませんね」
「え、あ、でもこう言うことは確実に分かってからじゃないと、もし間違えだったらいろんな意味で大変です。ぬか喜びさせたくないですし」
「それもそうですよね。では明日専門の先生に見てもらいましょう? 」

気の早いのかなんなのかもうその気になってる梅さんに、私は照れながらもブレーキをかけ止める。
仮定でそう言う重要な話をするのは、何よりも危ない。
幸いすぐに梅さんは分かってくれた。

でもこれはあれを使うには絶好のチャンス。
本当はもっと早く使いたかったけれど、バタバタしていて忘れていたんだよね?

「はい。でもその前に確認したいことがありますから、自室に一度戻りますね」
「分かりました」
「凪、赤ちゃんが出来たら嬉しい?」
「うん、すごく嬉しいよ」

待ち望んでいたのだから、嬉しくないはずがない。
母親になる自覚だって、それなりに・・・ある。
帯刀さんだってきっと喜んでくれる。

「そうか。なら出来てるといいね」
「そうだね。じゃぁすぐ戻ってくるね」

と言って、私は勝手場を飛び出した。


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