夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「凪さん、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫です。和宮様、これから先のことはどうかご内密にお願いします」
「・・・分かりました。私は凪さんを信じます」

声まで怯えて相当怖がっているのに私を心配してくれる和宮様に、私は冷静に受け答えし先に口止めをしておく。
幸いにも和宮様はすんなり頷いてくれたので、私は懐から四枚の四神の札を取りだし投げる。
するとシロちゃん達が、可愛い姿で煙の中から現す。

「みんな、打ち合わせ通りにお願いね」
『了解』
「動物と紐がしゃべった?凪さん、どういうことなのですか?」
「この子達は四神の仮の姿です」
「・・・四神?随分愛らしい仮の姿ですね」

案の定最初は驚く和宮様だったけれど、真相を知ると笑顔を浮かべそう言った。
今の四神を見れば大概は心奪われメロメロになる。
でもこの姿にしてしまったのは私。
そう思うと複雑な気持ち。

「そうですね。ですが本来の姿は、もっと大きくて立派な姿なのですよ」
「凪、私達はこの姿を気に入っているんで、気に病むことはありません」
「この姿だからこそ、ここは私だけの特等席」

せめて物償いで本来の姿がすごいことを教えていると、私の気持ちを察しシュウちゃんとそれからクロちゃんも気遣ってくれた。
特にクロちゃんはそう言いながら、嬉しそうに私の首に巻き付く。

確かにそう言われれば、そうだったね。
元の姿で甘えられても、押しつぶされるだけ。
それにシロちゃんにも、良く同じことを言ってくれる。
だからこれで良かったと言うことにしよう。

「凪、どうやら主役が来たようだ」
「では我らは一度隠れるが、何かあったらすぐに駆けつける」
「分かった。これですべてを終わらせよう」

シロちゃんの重い知らせに、私はそう言って唾をゴクリと呑む。
緊張してきて、手には大量の脂汗。
四神達がいるしどこかで帯刀さんと龍馬がどこかで張り込んでいるから、心配はしてないけれど緊張は当然する。


「宮様、連れてきました」
「ありがとう。あなた本当に毒味をなさったのですか?」
「ええ、それはもちろんです。ですからもし毒が入っていたとしたら、その者の自作自演ではないのでしょうか?」
「なっ?」

女中と共に入ってきた年配の性格が悪そうな叔父さんで、和宮様の厳しい問いにも男はさらりととぼけた答えを言い出す。

は?
自作自演って何?
私の建前は薩摩家老の奥方。
この人は正気なの?
それともただの馬鹿?

耳を疑うしかない呆れた台詞に、私は何も言えず唖然と彼を見上げた。

「無礼ですよ。凪さんは私の親しき友人です」
「・・・和宮様」

嘘でも嬉しかった和宮様の言葉にじーんとなる。

「では私が毒味をしていないとおっしゃるのですか?この方はあなたを殺害しようとした一味の」
「黙りなさい。真犯人は身内で自殺したことをあなたは知らないのですか?」
「それはそうですが・・・」

あろうことか和宮様に強く意見するものの、厳しい返り討ち合い悔しそうに口黙った。
随分傲慢でプライドが高そうなおっさんだけど、だからこそ同情も何もないから助かる。

「どうしてこのようなことをするのでしょうか?」
「私は無実です。毒味を行っていたことは事実ですが、それはその・・・」

ここまで来てまだ嘘を付こうとするけれど、つけるはずもなく言葉をつまらせる。
これで堂々と嘘をつけるのなら、敵ながらあっぱれという奴だ。



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