夢幻なる絆
□11.真犯人は誰?
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「凪さん、よくお越し下さいました。とても嬉しいです」
「私もです。お元気そうで何よりです」
「ええ、南方先生のおかげです。それなのに今回は大変ご迷惑をかけてしまい申し訳ないことをしました。南方先生には改めまして、お礼と謝罪をしたい思っております」
和宮様を待つことしばらくすると笑顔の和宮様がやって来て、元気そうな姿を見てホッとした。
しかも和宮様も南方先生が犯人だとは思っていたらしく、本当に申し訳なさそうに心からお詫びをする。
やっぱり南方先生が犯人だなんて、普通は思わないよね?
つまりあのお付きの人がどうかしていた。
「和宮様も信じてくれて嬉しいです。私はあまり役に立てませんでしたが。自殺した人の遺書を見つけまして、ここで開封したいと思います」
「そうなのですか?」
「 はい。こう言うものは殿方に見せない方がよろしいかと思いまして」
「凪さんは優しい人ですね」
「え、そそんなことないですよ」
昨日必死になって練習したことをテキパキ言っていると不意打ちとばかりの反応に完全にペースが乱れどもってしまう。
応用が聞かないと言うか、誉め言葉を聞きなれてないと言う駄目な奴。
「そうですよ。それに仲間思いなのですね」
「え、まぁ信じあうことができるから、仲間なんだと私は思います」
「・・・やっばり凪さんは羨ましいです。仲間がたくさんいて、旦那さんも優しそうで愛されていることがわかります」
仲間思いには恥ずかしさもあったけれどちゃんとしっかりした返答をすれば、和宮様は再びそう言い寂しそうに笑う。
将軍様と上手く言ってない何よりの証拠だ。
私の世界ではおしどり夫婦で有名だったんだけれど、こっちは違・・・まだきっかけがないんだろうか?
「和宮様、まずはたわいのない会話を毎晩してみたらどうでしょうか?なにもしなかったら、なにも始まらないですよ」
だから私は恋愛初心者なりのアドバイスをして、和宮様の手を握りニッと笑って見せた。
恋愛には対話が必要なんだと思う。
和宮様の場合は、まずは恋愛をしないとね。
「そうですよね?早速今夜から試してみます」
「頑張って下さい。結果報告を楽しみにしています」
前向きになっている和宮様に私は安心して、つい好奇心からなる言葉を言ってしまった。
それは無礼になるかも知れないかと思いきや、和宮様は笑顔で頷いてくれる。
つまり大丈夫なんだよね?
「宮様、お茶と菓子をお持ちいたしました」
「そうですか。入っていいですよ」
なごやかムードになるものの、そんな声でぶち壊しになり緊張する。
和宮様に言われて入ってきた女中さんは、手慣れた手つきでお茶と美味しそうないもようかんを出してくれた。
思わずよだれが出そうになるがそれを堪え、巾着袋からマリアちゃんに借りた検査キットを取り出す。
これは失礼なことかも知れないけれど、命を懸けて真犯人をあぶり出すのは勘弁して欲しい。
そもそも帯刀さんの許しも出ないだろう。
「それはなんでしょうか?」
「毒を検査するものです。毒が検出されれば検査紙が赤く染まります」
「それはちゃんと奥医師自ら毒味をしたので、そのようなことはしなくても大丈夫です」
やっぱり女中さんは少しムッとして反論するが、それは一番怪しい人で信用なんて出来ない。
「すみません。これは帯刀様の言いつけなので、やらせていただきます」
と一応申し訳なさそうにそう言いながら、さっそく検査を開始する。
スポイトにお茶を入れて、検査紙に垂らす。
刷ると真っ白だった検査紙が真っ赤に染まる。
何かしらの毒が入っている証。
和宮様と女中の顔は、みるみるうちに青ざめて行く。