夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「囮役は不本意だけれども、夕凪に任せるよ」
「え、私?」

思わぬ抜擢に信じられず声を上げ、帯刀さんをマジマジ見つめた。
不安いっぱいでも真顔で本気と言うことがわかる。
私としては嬉しいことだけれど、これは危険が伴う役目だ。

普通なら私になんかやらしてくれるはずがないのに、どうして?

「凪なら返り討ちにあっても、たかがしれている。それに食い意地張っているから、警戒なしに何でも食うからな」
「ななによ。それ?」

ここぞとばかりに龍馬は私を馬鹿にして、何がそんなに楽しいのか豪快に笑いだす。
図星だけど、腹が立つ。
私だって心を許していない人には、それなりに警戒するし疑う。

「何も食べない。飲まない。それが絶対条件だよ」
「分かってますよーだ」

帯刀さんまでもが龍馬と同じ考えなのか、当たり前のこと私に厳しく言い聞かす。
たまにしてくる完全な子供扱いに、カチンと来てムッとしながら返答する。

少しは妻のことをもっと信用して欲しい。
大体妻が子供でも、帯刀さんはいい訳?
こないだは嫌だって言っていたじゃない。
なのに本当に酷いよ。

「帯刀、私は何をすればいい?」
「マリアくんは、チナミと一緒に書状を持って私たちの代わりに江戸町奉行へ持っていって欲しい。そしたら南方先生と咲くんはすぐにでも釈放される」
「うん、分かった。がんばる」

いつでも全力で自分の役割をこなすマリアちゃんは、今度も嬉しそうに言われたことをすんなりと受け入れる。
私とは大違い。
でも私だって変な子供扱いしなかったら、ちゃんと重要な囮役を張り切っていた。

「あの〜、私はどうすればいいのでしょうか?」
「あなたはそうですね。この屋敷の女中として働いてもらいましょうか?」
「え?」
「それとも監獄に入る?処刑は免れたとしても、一生監獄の中で暮らさなければならないよ」
「・・・・・・よろしくお願いいたします」

女性の申し訳なさそうに聞いてくる問いに帯刀さんは少し考えて答えるけれど、明らかに嫌そうな表情を見せる物の彼女にはそれ以上の残酷な選択肢しか残っていなかった。
いやでも女中になるしかない。
私にしてみればどうってことないことでも、身分の高い彼女にとっては残酷なこと。
自業自得だから同情はしないけど。

「それなら早速働いてもらうよ。梅、ちょっと来なさい」
「はい。少々お待ち下さい」

帯刀さんも同情はないのかすぐに行動をお越し、梅さんを呼ぶ。

さっきの優しさは真犯人の名前を聞くためだったからなのか?

「所で小松。お前はなんでいつも話を大きくして、余計な仕事を増やす?」
「は?いきなり何チナミちゃん?」

なぜか突然チナミちゃんが目くじらたてて怒りだすが、意味がわからず首を捻り問い返す。
もちろん言葉事態の心当たりはありありだけど、今怒ってくる理由は分からない。
すると私がマリアちゃんに描いてあげたお茶碗の絵を、目の前に叩きつけられる。

「こんなもんマリアに渡すんじゃない。混乱するだけだ」
「それってこの絵が下手だからってこと?」
「決まってるだろう?」
「凪さんの天才的な絵のセンスには、我々には残念ながら理解できませんでした」
「・・・・・・」

アーネストも話に加わりこれ以上にない嫌みを言われ、私は反論できず悔しい思いをするしかなかった。
チナミちゃんなら言い負かす自信があるけれど、アーネストには言い負かされて泣かされるだけ。
確かに私の絵はド下手で幼稚園児並み。

「二人ともあんまり妻にひどいことを言わない。分かりきったことを言うのは、失礼なことだと思うけど」
「帯刀、それ全然フォローしてないぜ?」
「そう?」
「もう好きにして下さい。二度と他人に絵は見せませんから・・・」

帯刀さんにまでバカにされもうどうでもよくなった私は、そうやりなげに言い捨て紙をぐちゃぐちゃ丸めゴミ箱へと放り投げる。
はずしたけれど・・・。

「旦那様、ご用件はなんでしょうか?」



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