夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「この人が宮様を殺害しようとして、仁と咲に罪をなすり付けようとした。どうして関係のない人を巻き込んだ?」
「・・・すみません。まさかこんなことになるなんて夢にも思わず・・・私はただ・・・」

マリアちゃんじゃなけゃここまでズバッと聞けない問いをいきなり問うから、女性はますます顔色を悪くさせ怯えた蚊が鳴くような声でゆっくりと答え途中で途切れる。
宮様を殺害しようとして見つかってしまったのだから仕方がない。
自殺を止められても、どうせ処刑されてしまう。
だとしたら止めずに自殺させてあげれば・・・事件は闇の中になるだけだからそれだけはダメだ。

「その口ぶりだとどうやら黒幕がいるのですね。誰なのですか?言えばあなたの罪はいくらか軽くなりますよ」

帯刀さんは容疑者であっても、冷静に柔らかい口調で聞き出そうとする。
いかにも女性の扱いを心得ている帯刀さんらしい。
それはやっぱりいくら容疑者であっても綺麗な女性だからであって、これが男性だったら確実にボコされていたのだろう。

「あなたはまだ若いのだから、罪を償えば十分やり直せますよ」

こう言うことにはきつそうなアーネストまでもが、女性に優しく微笑み励ます。

・・・これが男性の悲しい性質ってものか。
別に女性の警戒がなくなるからいいんだけどさ。

「私はあの子に少し痛い目に合わせたかっただけで、あの方が下剤だと言われたのでほんの少し入れただけです。信じて下さい」

女性は少し冷静さを取り戻したらしく事情を語り出すけど、それはあまりにも幼稚な理由に私でさえ馬鹿馬鹿しくなる。

ムカついたから下剤。
いつの時代も女同士の争いは、いろんな意味で醜くくて怖い。

帯刀さんとアーネストもこれには呆れきりため息をつき、龍馬とチナミちゃんはあまりのことに目が点になっている。
マリアちゃんだけキョトンとしていた。

「それであの方とは誰なのですか?」
「奧医師の三隅先生です」
「そう。とするとこの事件の真相は一番馬鹿馬鹿しい逆恨みが原因になるね」
「誤診して恥をかいたのは、自分のせいなのにそれは棚にあげてよ」

真犯人は呆気なく分かり理由はともかく、これで南方先生と咲ちゃんの無実を証明できる。
今度は事情を知らないアーネストがキョトンとするけれど、マリアちゃんに事情を説明され納得し再び苦笑した。

帯刀さんの言う通り馬鹿馬鹿しい事件。
でもそれはサスペンスドラマの動機の十八番だ。

「それでこれからどうしますか?」
「三隅先生には罠をかける」
「罠?」
「そう。言い逃れできない決定的な瞬間を取り押さえる」

そんな結末にうんざりした帯刀さんは完全に切れたらしく、真犯人も男性だったため容赦はなく普通には捕まえないらしい。
とてつもなく恐ろしい邪気が漂い初め怖過ぎる。

「具体的には?」
「表場の犯人はこの人と言うことで、自殺したことにする。そして遺書を残したことにすれば彼はどうすると思う?」
「奪いに来るな。そこを押さえればいいんだな」
「ナイスアイデアです」

果たして本当にナイスアイデアがどうかは知らないけれど、龍馬とアーネストはかなり乗り気である。
確かに普通なら口封じするのは当然だろうけれど、果して武士に挑もうとする奧医師なんて世の中にいるだろうか?
それとも荒くれ者を頼って・・・あでも和の宮様の時のように、お茶にヒ素を入れて出せば簡単か。



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