夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「私今とっても幸せです」
「突然なに?怪我したのに幸せって」
「確かにそうですけれど、でもそのお陰でこうして帯刀さんの政務姿を見てられるから幸せなんです」
「夕凪の幸せは、ずいぶん安くて平凡だね」

つい独り言のように漏らした言葉に帯刀んは手を止め不思議そうに聞いてくるけれど、私は少し考え直してみるもののやっぱり幸せだと主張する。
私は帯刀さんが政務する後ろ姿を見るのが好きだから、こうして私の傍で政務をしてくれてるのは嬉しい。
あえて残念と言えば、お茶を出してあげられないこと。
すると帯刀さんは呆れながらも満足そうな表情になり、私の傍にやって来て頭をなぜてくれた。

平凡以下の私には、安上がりな幸せで十分。
だけど自分ではそんなに安上がりな幸せじゃないと思っているんだけれど。

「いいんです。それでも最愛の人の傍にいられるのならば」
「そう。それからもうダイエットはしなくていいよ。また貧血で倒れられたら、私の寿命が縮まるだけだからね」

これもまた満足のいく答えだったらしい。
そして真顔で私の体を心配してくれる言葉。

確かに無理なダイエットをすると貧血になるって良く聞くけれど、私の場合無理なダイエットはしてない。
適度な運動と三食に一日一回のそれなりの間食。
お酒は週に三回で、ほどほどにしている。
でも貧血なんて今まで一度もなかったから、原因はやっぱりダイエットになる?
間食しないと私の体はダメなのか?
体まで中身と似てわがまま・・・。

「分かりました。でも間食ほどほどにして、運動は無理せず続けます」
「そうだね。今夜は栄養たっぷりな物を作ると梅が張り切ってたよ」
「それは楽しみです。そう言えば、マリアちゃん達うまくいってますかね?」
「心配しなくても大丈夫。あの二人なら夕凪よりもしっかりしていて、勘の鋭い子だから」
「うっ・・・」

これ以上食べ物の話をしたらお腹の虫がパレードを起こし今の帯刀さんなら見境なく私に与えそうだったから、マリアちゃん達の話題に変えれば物の見事に墓穴を掘ってしまい立場をなくし撃沈した。
情けないけれど、確かにマリアちゃん達の方がしっかりしている。
私が心配するのはおかしいかも知れない。
でもやっぱり心配・・・と言うより気になるよ。

「犯人捜しは龍馬に任せているから、おそらく今日中に決着がつくだろうね。そしたら私と夕凪で報告しに行くよ」
「さすが帯刀さんですね。ありがとうございます」

もう問題児の私の出番はないと思っていたら、最後の最後で美味しい所を帯刀さんはちゃんと用意してくれていた。
龍馬に任せたってことは、何か思い当たる節があるのだろう。
帯刀さんは龍馬を信頼しているから、任せたんだと思う。
本気になった帯刀さんは鬼に金棒か。

「夕凪はどう言う訳か宮様に偉く気に入られているらしい。それにこれから気兼ねなく江戸城に遊びに来て欲しいと言われている」
「本当ですか?私も和宮様とゆっくり話してみたかったので、そう思ってくれて嬉しいです」

私にとってそれは嬉しいことでもあり、ますますテーションが上がる。
それを帯刀さんはクスクス笑いながら、私を温かい眼差しで見つめていた。




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