夢幻なる絆

□11.真犯人は誰?
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「何事ですか、騒々しい」
「あ、すみません。医学館に大事な用がありまして、・・・医学館の頭は誰なんですか?」

運悪くプライドがやたら高そうな中年男性が中から出てきて、私は謝るだけ謝り医学館出身の福田先生に名前を問う。

「あのその・・・この方が医学館督事の多岐元琰様です」
「あなたは誰ですか?」

眉を曲げいかにも機嫌が悪そうに問われたのは、私をただの町娘だと思われたのだろう。
これだからプライドが高い人は嫌いだ。

「私薩摩藩家老小松帯刀の妻小松夕凪です。南方先生の件できました」
「玄孝、本当なのか?」
「本当です」
「・・・中で詳しい話を聞きましょう」

どっちを取っても立場上大きく出れない福田先生は小さくなり、私達のことを失礼がないよう紹介する。
まだ私を疑っている物の、そう言って屋敷の中へ通してくれた。





「それであなた様は私にどのようなご用なのでしょうか?」
「あなた達は人を救う側の人間なのに、江戸の宝である人を陥れようなんて最低ですね」
「は、おっしゃっている意味がわかりませんが・・・」
「ネタはあがってるんです。福田先生をスパ観察員として使ったり、嫌がらせを度々するなんて人間のクズがやることじゃない?」
「・・・・」

客間に通されここに来た理由を問われてすぐ、私はさっそく喧嘩腰さらに見下した口調で話を切り出した。
最初はしらを切られようとしたけれど、更なる追い込みで言葉をなくす。
多少なりとも自覚はあるのか、ただ腹が立っているだけなのかは分からない。
いずれにしても私が薩摩家老の妻だから、下手に反論が出来ないのだろう。
その辺がエリートらしい所。

「凪、いい過ぎだろう?」
「私はただ真実を言ってるだけ。それとも龍馬はこんな人の肩を持つの?」
「まさか。俺だって南方先生を助けたいと思っているんだ」
「私も仁を助けたい」

気まずそうに龍馬は囁くが正論を言い返し納得させると、マリアちゃんまで大きな声でそう言ってくれた。

「なら問題ないじゃない?と言うわけで多岐先生。再調査を私達にやらせて下さい」

などと勝手に話をまとめ、本題を切り出す。

本当はいろいろ問い詰めたいとこではあるけれど、こんな連中と関わればストレスがたまるだけ。
関わらない方が身のため。

「なぜそこまで南方を信じる?」
「南方先生は私の命の恩人でもあり、、頼りになる仲間なんです。仲間を最後まで疑わずに信じるのは当たり前じゃないんですか?」
「薩摩藩はどのような考えで、どのようにして南方を取り込んだ?ペニシリンを独占しようと」
「それ以上言ったらあなたの首が吹っ飛びますよ。帯刀さんは南方先生の技術を世に広めて、誰もが平等に治療が受けられるようにしたいだけ。だから薩摩藩が全力で支援して、若く将来有望な医師達を南方先生の元で学ばせているんです」

問われると思った南方先生との関係には冷静に答えられたけれど、想像もしてなかったムカつく問いには感情をむき出しにして睨みながら言った。

そんな卑怯なこと帯刀さんはしない。
南方先生の意見をなるべく尊重して、庶民の治療は今もほとんど無償で行っていた。
将来有望な医師は藩医以外の人も選んで南方先生の元で学ばせている。
そりゃぁ薩摩藩の人気取りってことぐらいは、多少は考えているとは思うけれど・・・。

「すまない。・・・わかった。あなた様達に託す。私とて人の命を救う者。無闇に人を殺したくはない」

私の思いが伝わったのかそれともこれが彼の本音なんだろうか、とにかく最後にはいい人となり了承してくれた。

ひょっとしたら思っていたより、悪い人じゃないかも知れない。

そして次は現場に行こうと立ち上がると、激しい目眩が私を襲う。



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