夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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梅さんの厳しい教育指導の成果を帯刀さんに見せるため、武人の妻らしく帯刀さんの帰宅を出迎えることにした。

梅さんには良い顔をしなかったのは、まだ完璧じゃないから?

「あなた、お帰りなさいませ。政務お疲れ」
「やり直し」
「え、何かおかしかったですか?」

自分ではそれなりにきちんとこなせてると思ったのに、言いかけ最中に同情もなくばっさり言われてしまう。
つまらなそうに不機嫌でしかない表情で私を見下す。

そんな帯刀さん顔なんて見たくないのに、なんでそんな顔をするの?

自覚ない私は怯えつつも、悪い箇所を聞くけれど、

「すべて。私の妻は夕凪だよ」

ズバッと否定され当然とばかりに断言する。
意味不明でしかなく理解に苦しむ。

私の妻は夕凪だよ。
そんなこと言われなくても分かっている。
でも言われて、ちょっと嬉しい。

「奥様、やはり旦那様は奥様らしい出迎えがよろしいのでは?」
「私らしい・・・そうなんですか?」
「当たり前でしょ?」

心底悩んでいると梅さんは苦笑しながらそう教えられて、半信半疑で帯刀さんに聞いて見れば二つ返事で頷かれる。
それは嬉しく思うよかけなされているような気がするんだけれど、帯刀さんがそれがいいと言うのなら仕方がない。
妻は旦那様の望みを叶えるのが勤め。

「それなら、帯刀さんお帰りなさい。今日は早いんですね」
「ただいま、夕凪。今日は早く終わったから、帰ってきたんだよ」

少々納得はいかないながらも言われた通り、そう笑顔で言いながら帯刀さんにダイビング。
すると帯刀さんは私を受け止めてくれ、自然と唇が重なり合う。

私も実はこっちの方が数十倍好き。


「あの〜俺達のこと忘れてません?」
「え?」
「凪、こんにちは」
「ワンワン」

キスの最中聞き覚えのある男性の声が申し訳なさそうに問いたと思えば、マリアちゃんとそれからコロの声も聞こえる。
慌ててキスを中断させ視線を向けるとそこには、マリアちゃんとマリアちゃんのお兄ちゃん渓がいた。

マリアちゃんのお兄ちゃんだけに渓は、超イケメンで顔の彫りが深くて赤毛の天パー。
そんでもって眼鏡が似合っていてる。
人当たりも良さそうだしこんなイケメンだったら、帯刀さんと同じで女性には不自由しなさそうだな?

「これは失礼。夕凪、梅。またしばらくマリアくんを我が家で預かることにしたよ」
「本当ですか?マリアちゃん、また宜しくね」

帯刀さんには珍しいことだけれど私としては大歓迎だから、笑顔で快くマリアちゃんを迎え入れる。

それにしてもあんなに警戒していたのに、渓と何を話してそうなったんだろうか?
もう調べがついて疑いはなくなった?
それともただ単に、マリアちゃんが気に入っているだけ?

「お世話になります」
「すみません。しばらく江戸を離れることになりまして。妹を一人で残すよりここで預かってもらった方が安心出来きます。申し訳ないのですが、またご迷惑をお掛けします」
「気にしないで下さい。妻はマリアくんを気に入っていますから、私としても歓迎しています」
「そうだよ。マリアちゃんって素直で可愛いしすごく良い子だから、渓は心配しないで用事すませてきてね」

とにかく妹を心配していることがよく分かったため、私も帯刀さんも迷惑じゃないことを言って胸を張る。
それに私達を頼ってくれて、嬉しいと思う。

妹思いの優しいお兄さん。
マリアちゃんのことを何よりも大切にしているんだね。




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