夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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若い潘士は門番に左遷されていた。
帯刀さん曰く頃合いを見て戻すと言っていたけれど、一体いつが頃合いなのか疑問だった。


「夕凪、ついたよ」
「ここがそうなんですね。わぁ〜美味しそうな甘い匂い」

甘味屋から漂ってくるさまざまな美味しそうな匂いに私は心奪われ、帯刀さんの繋いでいる手をぐいぐい引っ張り店の中へと入る。

「いらっしゃっ・・・御家老様?」
「しっ、騒ぎ立てないでください」

店の人は帯刀さんのことを知っているらしく驚くけれど、帯刀さんは辺りを警戒しながら小声で警告する。
幸い誰にも聞かれずにするだのか、平穏を保っている。

「すみません。ですが言ってくれればいつものようにお邸までお持ちしますのに」
「いえ。今日は妻の供でしてね」
「あなたが・・・」
「え〜とそのこんにちは。帯刀さんに、お願いしてたんです」

帯刀さんはためらいもなく私を紹介するけれど意外そうに見られてしまい、さっきの件もあり帯刀さんの手を握り締めながら私は自信なく挨拶を交わす。

私はまた帯刀さんと不釣り合いだと言われて、また傷付くのだろうか?

「それでわざわざご足労頂いたのですね。あなたのことは小松様から聞いております。いつもごびいきにしていただきありがとうございます」
「え・・・?」
「小松様はいつもあなたのばかり楽しげに話されていて、そこまで愛される人はどんな人だと思っていたんです。予想通りあなたも小松様のことを大変慕っているんですね」

最悪自体を予想して怯えていたのに、女性はニコニコしながらそう言ってくれる。
思ってもいないうれしい言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。
この人なら大丈夫。

「ねぇ、だから言ったでしょ?私達のことを知っている人なら、ちゃんと分かってくれると」
「はい、そうですね。だったら団子にわらび餅それから羊羹も。後は抹茶も二つ下さい。あっくずきりも」

得意げに帯刀さんは私にそう言い切るからすっかりその気になってしまい、いつもの元気を取り戻し好きな物を注文する。

ここの甘味屋の品物はどれも美味しいから、一つなんか選べない。
甘い物は別腹って昔から言うしね。

「はい、かしこまりました」
「夕凪、そんなに沢山頼んで食べられるの?」
「もちろんです」
「・・・太るよ。私も少し食べるから」
「・・・はい、分かりました」

注文を終えたおばさんはすぐに厨房に行って私達は奥の席に座ると、早速痛い事実でしかないだめ出しをされてしまい凹む私。

確かにそれは真実で、最近太ったかなと思い始めていた。
どうも私は幸せ太りをする傾向があるらしい。

「夕凪、最近太り始めてるよ。見かけは分からないけれど、抱くとすぐに分かる。少しぐらいなら大目に見るけれど、私は子豚は嫌いだからね」
「うっ・・・。・・・気をつけます」
「そうだね。それがいい」

そこまでハッキリ言われたらダイエットをするしかなくなり気乗りしないけれど、渋々了承すると帯刀さんはニッコリ笑い私の頭をなぜられる。

これで私のダイエットは本格的になりそう・・・。
明日から野菜中心の生活か・・・。

「帯刀さん、どこまで痩せればいいですか?」
「そうだね。もう少しお腹の贅肉を取って、今の体型を保つこと」
「・・・。なら毎日ジョギングして食事も控えめにするだけでいいですか?」
「それに、しばらくは間食は禁止だよ」
「・・・ですよね」

それは簡単なようで、難しいことでもあった。



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