夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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地獄絵に近い惨劇がどうにか終わり数日後に迫った和の宮様はお忍びで芝居を見物の件をを少しだけ打ち合わせした後、私は帯刀さんの部屋に通され十二単から着物に着替えなおし待っているとようやく政務が一段落したのか帯刀さんが戻ってきた。

「帯刀さん、ありがとうございます。私帯刀さんのおかげで、そんなに嫌な思いしませんでした」
「なら少しはしたんだね?」

まだ少しだけ機嫌が悪く多少話し難さがあったけれど、思えばすべての原因は私にあり私のために怒ってくれたことがありがたかった。
しかもまだ私の心配をしてくれている。

「ほんの少しだけですよ。でも帯刀さんにすごく愛されるってことを再確認出来たからいいんです」
「そうだよ。私は夕凪を何よりも深く愛している。だからああ言われると腹正しい。将来有望な部下ではあったが、あそこまで空気の読めない見る目がないとはね」
「有望な部下だったら、多めに見てくださいね?」

確実に私のせいであの若い潘士の将来がなくなりかけているため、穏便に済ませるようお願いをしてみる。
若い潘士はきっと帯刀さんのことをすごく尊敬していたからこそ、相手が私だからあそこまで強く批判したんだとおもう。
私だって帯刀さんには私よりもっとランクが上の女性が釣り合うってことぐらい自覚してる。

・・・・・・・。
・・・誰が見たって、私達はお似合いじゃない・・・。

今更ながらそう考えたら落ち込みだけ落ち込んでしまい、無意識のうちに帯刀さんの手を強く握りしめていた。

「夕凪、そんな悲しげな顔をしたら私まで辛くなる。一応公私のわきまえは心得ているつもりだけれど、さすがに今回ばかりは難しいよ」
「そんなの駄目ですよ。私なら・・・大丈夫ですから」
「全然駄目でしょ?」

すぐに私の異変に気づいた帯刀さんから心配されると同時に過激なことも言われてしまい、わざと平然をよそって見たものの即効で見透かされ強く抱きしめられる。
いつもと同じ暖かい温もりが、私の不安な気持ちを安心させてくれた。
その瞬間、大粒の涙が溢れ流れ出す。
他人の言葉なんて気にしたらいけないと言うけれど、こればかりはやっぱり無理。
ショックは自分で思ってる以上に大きいらしい。

「私明日からちゃんと家老の妻としての教育を受けます。だから先生を付けて下さい」
「私は今の自由奔放でありのまま夕凪が一番好きなんだよ。だからそこまでしなくていい」

せめて礼儀作法ぐらいはマスターして顔は駄目でも品のいい女性になろうとして決意を表明するが、そんなことを言われて却下されてしまった。
確かに帯刀さんはありのままの私を好きでいてくれる。
でもそれでいいはずがない。

「でもそしたら私いつまでたっても周囲から帯刀さんの妻だと認められません。・・・そんなの絶対にいやです」
「夕凪と私の関係を知れば、誰でも認めてくれる。その証拠に西郷も南方先生も龍馬も梅も認めてくれてるでしょ?」
「まぁそう言われて見ればそうですが・・・」
「だからいいの。でもまぁそこまで言うのなら、梅に礼儀作法ぐらいは教わりなさい」
「あ、そうですね。そうします」

帯刀さんのお得意の屁理屈で危うくうやむやになりそうだったけれど、ちゃんと私を考えてくれていてなんとかそれで話はついた。

梅さんならばなんの申し分もない。




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