夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「ご御家老がどんなに奥方様を愛していらっしゃるかは、よく分かりましたからもう良いです」
「素性も確かなようですし、御家老が決めたことなら我々は反対など致しません」

しばらく語られた私と帯刀さんの馴れ初め話に、潘士達はうんざりし若干納得できないながらもを帯刀さんの妻だと渋々認めてくれた。
私と言えば恥ずかしさを通り越して、もうどうなっても良くなりかけている。
本当に私は幸福者だ。

しかし一人若い潘士は眉間にしわを寄せ納得が行かないと言わんばかりの表情を浮かべ、そして私を疑いの視線を向けながら口を開く。

「御家老は本当にそれだけの理由で、婚姻されたのですか?見た所彼女はどこにでもいそうなありふれた女性。何も得はないかと」
「あるよ。夕凪が傍で笑っているだけでも、私の心はいつでも安らかでいられる。それだけで十分でしょ?でもまぁ敢えて言うのなら、妻は四神の神子だから四神は薩摩の最高の武器となったよ」
「四神の神子。確かにそれはすごいですね」
「さすが御家老ですな」
「そうではないかと思いましたよ」

若い潘士の明日を心配しつつも話は表向き穏便に進みこれまた計画通りのネタバレすれば、潘士達全員の違和感があった空気が完全に消えようやく晴々する。

やっぱり私みたいな凡人以下は、普通なだけじゃ認めてくれないらしい。
なんか複雑な気持ち。

「あくまでおまけだよ。私は四神を政治的に最大限に利用するとしても、夕凪はけして危ないことはさせないし利用もしない。いいね?」
『御意』

結局予定通り四神をバリバリこき使うことになりこの場を丸く納めるが、さっきの若い潘士はまた納得できていないご様子を見せる。

まさか私この人に嫌われてる?
初対面なのに、どうして?
それとも単なるうたぐり深いだけ?

「何?言いたい事があるなら、はっきり言いなさい」
「失礼ながら私はこの目でちゃんと見なければ納得出来ません。四神の神子の証を見せてくれませんか?」
「ねぇ君それ本気で言ってるの?」

強気でそう問う若い潘士だったが、それは帯刀さんの逆鱗に触れてしまった。
一気に帯刀さんの声は低くなりものすごい殺意を漂わせ、笑っていない笑みを浮かばせ一応再確認。

「早まるな。それ以上御家老を怒らせるんじゃない」
「え、私はただ当然のことをといてるだけです。私にはどうしても彼女が御家老には相応しくないと思うのです」

ブチッ


西郷さんは血相を変え慌てて若い藩士に救いの手を差し伸べたのにも関わらず、とことん鈍感らしく更なる逆鱗に再び触れる。
その瞬間帯刀さんの何かがブチギレるもの凄い音がした。
たちまち帯刀さんの顔が真っ赤に染まり、今まで感じたことのない邪気が漂う。

怖い。
怖すぎます。

「私に相応しくない?それは君が決めることじゃなく、私自身が決めることだよ」
「それはそうですが、私は御家老に慕っているからこそ御家老にはそれ相当なお方と・・・」
「それ以上のことを言ったら、君の息の根を止めるよ」
「御家老、落ち着いて下さい」
「落ち着けるわけないでしょ?私以外の人に夕凪がここまで侮辱されているんだよ?」

ここまで来ても若い藩士は自分の立場が分かっておらず馬鹿正直なことを言い続け、本当にもう誰にも手が終えない悪い状況へと発展して行く。
そのため普通だったら凹みまくる私だけれど、今はそれどころではなく圧倒されるしかなかった。




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